第13話 その肩を、降ろしていい

日曜の午後だった。

学校でもなく、アルファの家でもない場所。


遼太は、父親と再会した。


二人で並んで腰かけたのは、公園のベンチ。

落ち葉が舞っていて、子どもたちの笑い声が遠くに響いていた。


父は、少し痩せたように見えた。


「……来てくれて、ありがとな」


遼太は、うなずいた。


「おまえさ、母さんのこと、気にしてるだろ」


遼太は、視線を落とした。


「心配だよ、そりゃ」


「でもな、遼太。

それは“おまえが背負わなきゃいけない責任”じゃない。

それは俺の責任だ。

父親であり、夫である俺の役目なんだ」


「……」


「母さんはな、今、医療機関とAI支援の両方でサポートを受け始めてる。

苦しんでるけど、向き合おうとしてる。……俺が付いてる。」


「これまで俺は、子供のおまえに全てを押し付けていた。父親としても、夫としても失格だった。本当に申し訳なかった。許してくれ・・・・・」


沈黙。


「だから今度は、ちゃんと俺がやる。 おまえは、もっと甘えていいんだ。幸せになっていいんだ。」


遼太は、唇をきゅっと結んだまま、何も言わなかった。


こらえていた事すらわかっていなかった何かがほどけ、急に堰を切ったように

嗚咽と涙があふれだした。

ここがどこかなんて考える余裕もなかった。気が付いたら、声を上げて泣いていた。

自分がこんなにも悲しく、心細く、苦しかった事に、その時初めて気づいた。


「悪かったな・・・本当に悪かった、遼太。これからは、お父さんも、先生も、みんなでお前と母さんの事を守るから。」


静かな声だった。


「母ちゃんの事、よろしく、父ちゃん」


父も泣きそうな表情をこらえながら微笑んだ。


遼太のポケットの中では、スマート端末が記録をしていた。

AI先生への自動ログ提出は、こう記されていた。


──“父と会話:心拍安定/発話時の緊張指数低下”

──“心理安定スコア:+12”

──“記録者補足:

 本発話は、信頼構築プロセスの新段階として保存されます。”

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