第33話 赤はない

娘と同じ大学、娘の知り合いなのだろうか。


それだったら、娘が言うはず。


今まで大学の駐車場をインスタに載せなかったのは、学生の車に興味はないからか、今日は保護者が来ていたから……。


あの人の気持ちになってどうする。


ここにいるかもしれないのに。


でも、見える範囲に赤い車はない。


薄暗くて遠くまでは見えないけれど。


ゆっくりと車から降り、軽く辺りを見回す。


不審がられないように。


やはり、赤はない。


いつものように体を伸ばしてみる。


思いの外すっきりとしていて、深く眠れたんだなと思う。


トイレへ行こう。


誰かに見られている感じはしない。


日曜日の夜に近い夕方だからか、雨が降っていたからか、トイレはいつもより少し汚れているような気がした。


ゆっくりとトイレの入り口から出て、赤い車が見えないことを確認し、売店へ行く。


お腹が空いている。


買ったことのない物を買ってみよう。


高価な手作りパンとか、コンビニの2倍の値段のスパムおにぎりとか。


狭い店内を3周くらいして、結局、コンビニとさほど値段が変わらないアイスにした。


海を見ながら食べたいけれど、蚊がいそうなので車へ戻ろうと思ったとき。


「あの」


売店を出たところに男の人がいたことに全然、気がつかなかった。


油断していた。


だって、赤い車はなかったのに。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る