第32話 歌っているような声が聴こえる

出口に近いところへ、そろそろと車を進める。


赤いスポーツカーがないか確認しながら。


まるで揃えたかのように、白と黒の車しかない。


ゆっくりと車を停めた。


トイレへ行っておきたいけれど、眠ろう眠ろうと瞼が迫ってくる。


バッグからタオルを探す。


湿り気を感じるけれど、これしかない。


急かされるようにシートを倒し、タオルを瞼に乗せる。


よかったねぇ、と歌っているような声が聞こえる。


娘の声かなと思ったときには、ほとんど眠っていた。



突然、目を開いた。


喉が渇いている。


外は薄暗い。


夢は見なかった。


見ていたような気がするけれど覚えていない。


息苦しくて、エンジンをかけて四つの窓を全て開けた。


風が流れていく。


腰、背中、肩が強張っている。


スマホを見たら2時間近く経っていた。


寝過ぎでしょ、と笑ってしまう。


水を飲みたかったけれど、インスタを開いた。


あの人の今日の投稿を見つけ、それが見覚えのある場所だった。


どこか、知っている場所。


頭が働いていない。


心臓が強く打っている。


ラインを間違えて違うグループに送って慌てて消すときのように。


さっきまでいた場所。


娘の大学の駐車場、と思い当たった。





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