第31話 余計に腕が固くなる

今、夫へ電話しても、飲みに行くかどうかは決まっていない時間だ。


真直ぐに帰ったら、寛いでいる夫がいる家で家事をしなければいけない。


娘もああ言っていたし、と、パーキングに寄る理由はいくらでも思いつく。


けれど、一つ目のパーキングに車を向けることはできなかった。


こんなに条件の揃った時に寄れなければ、二度と行くことはできない気がする。


平日はフルタイムで働いて、やることが減った家事をして、体が動くまではバレーをして、三線を弾いて、動画を見て。


パーキングの表示が見えてくる。


行けない。


あの人はいないはずなのに。


娘は人前で歌えるのに、私はどうしてこんなに臆病なのか。


涙を近くに感じ、余計に腕が固くなる。


ダメだ。


ウインカーが光っている。


前の軽トラックの。


同じようにウインカーを光らせる。


軽トラックと、全く同じ流れで左へ入っていく。


神様、と思う。


普段、神様のことを一切考えないくせに。


ほんの少し微笑むと、腕が、体が柔らかくなった。


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