第29話 寄らずに帰れるだろうか
300人くらい立てる芝生の広場に、ぽつりぽつりと人がいる。
小雨が降っているからか、それとも毎回これくらいなのか。
娘のバンドが出てきた。
前の方にいる集団が歓声をあげる。
マイクの後ろで娘がお辞儀をし、ゆらりゆらりと揺れながら歌い始める。
大きな盛り上がりがない、日本語だけれど外国語のような、夜に飲みながら聴いた方が似合う曲。
座ってビールが飲みたい。
でも、帰りは運転するので飲めないし、お尻が濡れるので傘を指して突立って聴くしかない。
娘の歌い方は、こちらが恥ずかしくなるようなナルシスト的な歌い方ではない。
でも、娘が歌っているのを見る度に、私が産んで育てた娘だけれど自分とは別人だということを思い知らされる。
野球の応援をしている時は、自分のこどもに打席が回ってきてほしい、塁に出てほしい、ボールが飛んできてほしい、と思っていたけれど、娘が歌う時はただただ無事に終わってほしい、と願う。
ゆるいメロディ、学生らしい歌詞。
それはでも、小雨に合っている。
私は、パーキングに寄らずに帰れるだろうか。
もし、夫が今日飲みに行くなら、余計に。
いつ行っても、赤いスポーツカーに乗った、あの人がいる気がする。
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