第26話 夫からの返しはない
夫が家で夜ご飯を食べるときは、なるべく一緒に食べないで済むように、私は先に食べる。
食べるというか、作りながらつまむ。
ビールさえあれば、それでいい。
夫が食べている時に、食べない私が同じテーブルにつくのも変なので、私はだいたいキッチンに立っている。
夫の、くちゃくちゃ食べる音やすする音が苦手なので、そういう気配がしたら洗い物をする。
水を流せば音はほぼ、聞こえなくなる。
だから、うちのシンクや鍋はピカピカだ。
磨き過ぎて薄い傷が入っているくらい。
「よく人前で歌えるな」
夫が言ったので、「そうだよね」と返した。
「あいつ、うまいのか? 歌は」
「上手くはないけれど、下手でもないような。運動神経が良い人は歌も上手いと聞いたことがあるけれど」
夫からの返しはない。
どうやら話は終わったようだ。
夫が味噌汁の椀に手を伸ばしたので、水を出した。
いつまでも、あると思うな、夜ご飯
ふいに5・7・5が浮かんだ。
いつまでもある、食べたい時に食べられる、と夫は思っているんだろうな。
もう、これ以上、ご飯は作りたくない
私がそう言う日は遠くないのかもしれない。
でも、そしたら私はここにいる理由がなくなる。
日本の中でも沖縄は離婚率が高い。
私の姉二人も離婚している。
上の姉は再婚し、下の姉はこども達が独立し、恋人ができた。
二人とも、離婚して幸せになっている。
ご飯も一緒に食べているのだろう。
私が夫と離婚しない理由は、娘が大学生だから。
あとは何だろう。
食事が終わり、泡盛が入ったグラスだけを持って夫はソファーへ向かう。
私は夫が残した食器を運び、洗う。
あとは、慣れ、なんだろうな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます