第22話 私を見ている

売店に戻るのもおかしいし、買ったばかりのペットボトルを持ってトイレへ行くのもおかしい。


しかも、トイレの方へ歩いたら、彼の視界に入ってしまう。


海が見える建物の裏へ行ったら、私が彼を観察することができない。


自分の車に戻ったら、私の軽自動車と私が紐づけられてしまう。


それはイヤだ。


一個前のパーキングだったら軽食を食べられるスペースがあって、そこから外を見ることができた。


私が彼を観察することができた。


でも、このパーキングには逃げ場がない。


彼がスマホを下ろし、私の方へ歩いてくる。


不自然にならない程度に彼を迂回しながら車へ戻る。


彼は前を、売店の方を見ている。


私は自分の車の方へ顔を向けつつも、彼をチェックする。


娘と同じくらいの年齢だ。


なのに、どうして高価なスポーツカーに乗れるのだろう。


親の車だろうか。


離れているけれど、すれ違った。


彼が立ち止まり、振り返った、気配がする。


おそらく、私の方を、私を見ている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る