第9話 入り口に坊主頭の夫

体育館の入り口に坊主頭の夫がいた。


野球のユニフォームのまま、私達の練習を見ている。


スパイクをネットにかけたり、レシーブを弾いたり、無様な姿を見せたくない。


ボールをいつもより見る。


声を出して、ボールを取るべき人の名前を呼ぶ。


足が動く。


高く跳べる。


試合の時のように、集中力が高まっている。


別に夫は私はミスしようが、スパイクを決めようがなんとも思わない。


あの人はただ、バレーをしている私を見ているだけだ。


それで好きになったり、嫌いになったりしない。



そんなこと、あの頃の私はわかっていた?



体が、足が震えてハンドルに当たり、目を覚ました。


目を覚ましたということは、眠っていた。


今日はバレーの試合なのに。


寝過ごすなんて、今まで一度もなかったのに。


どれだけ急いでも8時には間に合わない。


ラインしてチームのメンバーに知らせないと。


でも、もう少しここにいたい。


もう少し、あの頃の夢を見ていたい。


そういうわけにはいかない。


エンジンをかける前にスマホを手にする。

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