第10話 虚飾する必要はない

「え? パーキングで?」


ママさんバレーの試合、一回戦を勝って終えた後に、なぜ遅れたかを訊かれた。


「コーヒーを飲んでいこうと思ったら、寝てしまって」


汗で濡れたユニフォームを脱ぐ。


「パーキングのコーヒーって美味しいんですか?」


私より一回り下の子が着替えながら訊いてきた。


「美味しくはない、かな」


「えー、じゃあ、なんでわざわざパーキングに寄るんですか?」


変なの、とは言わなかったけれど、この子や、私達の話を聞いているであろう他のメンバーも、そう思っている。


「なんか、落ち着くんだよね」


「えー、車の出入りが多くてわさわさしてません? ぜんっぜん、落ち着かないですよー」


「そうなんだけれど」


愛想笑いを返す。


彼女に悪気はない。


メンバーは次の試合のために白のユニフォームに着替え、ぞろぞろと更衣室を出ていく。


私は一番後ろで、ゆっくりと階段を昇る。


もちろん、傷ついていない。


年を重ねて跳べなくなったし、ボールに対する反応が悪くなった。


けれど、いちいち傷つかなくなったのは良い事だ。


虚飾する必要もなくなったし。


世話しなければいけないこどもも近くにいないし。


体は重くなったけれど、心は軽くなっているはずだから。

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