第10話 虚飾する必要はない
「え? パーキングで?」
ママさんバレーの試合、一回戦を勝って終えた後に、なぜ遅れたかを訊かれた。
「コーヒーを飲んでいこうと思ったら、寝てしまって」
汗で濡れたユニフォームを脱ぐ。
「パーキングのコーヒーって美味しいんですか?」
私より一回り下の子が着替えながら訊いてきた。
「美味しくはない、かな」
「えー、じゃあ、なんでわざわざパーキングに寄るんですか?」
変なの、とは言わなかったけれど、この子や、私達の話を聞いているであろう他のメンバーも、そう思っている。
「なんか、落ち着くんだよね」
「えー、車の出入りが多くてわさわさしてません? ぜんっぜん、落ち着かないですよー」
「そうなんだけれど」
愛想笑いを返す。
彼女に悪気はない。
メンバーは次の試合のために白のユニフォームに着替え、ぞろぞろと更衣室を出ていく。
私は一番後ろで、ゆっくりと階段を昇る。
もちろん、傷ついていない。
年を重ねて跳べなくなったし、ボールに対する反応が悪くなった。
けれど、いちいち傷つかなくなったのは良い事だ。
虚飾する必要もなくなったし。
世話しなければいけないこどもも近くにいないし。
体は重くなったけれど、心は軽くなっているはずだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます