第7話 時間が長くなっていない?

眠りから目覚め、いつものようにトイレへ行き、売店を覗いた。


何も買わずに売店を出て自分の車へ。


自分の車がない。


窃盗グループに持っていかれた?


私はただ一人、ここに残された?


数歩、前に出て、端から端までもう一度視線を移動させる。


シルバーの軽自動車。


こども達を乗せていた7人乗りから軽自動車へ乗り換えて半年経つのに、いまだに前の黒くて大きな車を探してしまう。


もし見つからなかったら、娘が迎えに来るまでの間、ここにいられたのにと思いながら運転席を開けた。


運転席に座り、さて、と考える。


さて、夜ご飯は何を食べよう、と。


こども達に作っていたから毎日の料理をがんばれた。


一人、二人と巣立っていき、どんどん作る意欲がなくなっていった。


夫は、朝はコーヒーだけだから、私の作った物を食べるのは飲みに行かない日、週に1回か2回だけだ。



『家族として、毎日同じ空気を吸い、同じような物を食べたり飲んだりしていれば、同じような体、同じような思考になっていく』



そんな言葉を見つけた時、うちは違うと思った。


あの人の体の半分はアルコールとつまみでできている。


体に溜まったアルコールが次のアルコールを求める。


私は?


エンジンをかける。



お母さん、パーキングにいる時間が長くなっていない?



私の場合、パーキングが夫のアルコールと同じなのかもしれない。


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