第4話 また……。

「はぁ、はぁっ」

 肩で息をするほど走るのは久しぶりだ。呼吸が荒い。苦しい。


「あーあ……。」


 こんなはずじゃなかった。もっと上手に離れる予定だった。


     ーまた誰かを傷つけたー


 事実だけで充分なはずなのに。

 さらに傷つける必要は無かったのに。


「……上手くいかないなぁ。」


 もうすっかり夜になったらしく、春の風は冷たい。前も後ろも暗くて見えない。


(ここはどこだろう。)


 でも……


(そんなこといっか。)


 誰かが迎えに来てくれるわけでもない。

 帰る場所があるわけでもない。


 なら。


「ここがどこでもいーや。」


 唇を噛む。私にその権利があるはずないのに。


(私ってこんなにずるかったっけ。)


 思わず苦笑してしまう。都合がよすぎる。

 

「自分で後悔するならやるな。」ーこれって誰の言葉だっけ。うざいなぁ。


 頭の整理ができない。吐く空気は温かさをなくし冷たさだけになる。空っぽならどれほどいいものか。


 真っ暗で怖さを含む森の中で気を失うように目を閉じた。

 月の光は綺麗で、虫の音は落ち着く。不気味な景色も私にとっては何の意味もない。

 冷めない感情と消えてくあたま。

 落ちるように眠るのであった。

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