第5話 気の赴くままに

 目覚めたのは早朝だった。空は晴れて、空気は澄んでいた。見慣れない景色と空気感に気圧されながらも、悪くもないなんて思う。


「おはよう。」


 何かに言ってみる。返事はないけど。

 どことなく痛む体は昨日しっかりと寝る準備をしなかったからだろう。間違いない。


「……動くか。」


 自給自足の暮らしは初だが、一人で暮らしていた経験はある。この世界の知識は三割くらいしかないけど。怪しいキノコさえ食べなければほとんどの食材は大丈夫だろうなんて思っている。もしかして私って軽々しい?


 方位すらわからないのに、自分の思うままに進むとそれが正解となる。そんな気がした。足が止まることはなかった。誰もいないというのが良いのか。それともこの自然が生み出す感覚が好きなのか。どっちでもいいような。どっちもあるような。なんて考えながら食べられそうなものを採ってみる。ふと、


(これはなんだっけ…?)


 なんか見たことあるこの果物の名前を思い出してみる。たしかこの毒々しい見た目のやつは……。このいかにも食べられませんって見た目の果物は……。


「ポイドッセだ!」


 思わず声に出してしまう。見た目はアレだけど味は美味しい。食べるには少し勇気が必要だが。まぁ、食べられればいっか。1週間くらいは持ちそうだし。とりあえず三つ採っていこう。


 次はどこにいこう?鼻歌交じりでスキップしながら進む。アレもコレも美味しそう。これはどう調理しよう?

 気づいたら1時間くらいすぎていた。もっと探して収穫したい。でも、時間を忘れるほど熱中したからすごく疲れた。



 さて、今日の収穫を確認しよう。

 まず、毒々しい紫の見た目をしたポイドッセ三つ。次に、バナナのような見た目の野菜バナポッタ。苦いので一つだけ。そして最後にクリッムプ。スッキリとした果汁でジュースとして飲んでも、料理の隠し味としても使える万能な果物を四つ。合計で八つだ。それ以外にも採ってきたものが五つほどあるが名前がわからない。後で調べよう。


 お次は調理だ。

(何にしよう…?)

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気ままにいきたいお年頃です! 桃花儘 @toukamama

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