第2話 私は……

 誰も居なくなった部屋をただなんとなく見渡して見る。煌びやかな部屋と装飾。着慣れないドレスと輝くネックレス。前世とは程遠い生活で未だに慣れない。


「ねぇ、ここはどこ?」

 もちろん返事は返ってこない。喋る鏡も妖精も私には見えない。私には特別な能力は無かった。


 この世界には魔法が使えたり、妖精が見えたりする特殊能力を持つ人が大半だ。一人一つ特別な力を持つのがこの世界の当たり前。


 ーしかし、私に特別な能力はなかったー


 漫画の世界が優しいだけで、転生者が必ず一つ特殊能力を授かるなど誰も言ってない。

 むしろ、「この世界の人間ではないから特殊能力がないのではないか」そう思ってすらいる。


「雪埜 凪季」《ゆきや なぎ》


 私の転生前の名前。もう誰もこの名を知らないのではないか。そう思ってしまうと少し怖くなる。


 別に今の世界が嫌いなわけではない。母も父も優しく、平穏で幸せな生活。しかし、本当はという事実が苦しかった。私は愛されて育てられている。だからこそ、嫌だった。


 ー生まれるはずだった二人の子は

             私に殺されたー


 そう思ってしまう。だから、一人暮らしをしたかった。そう思った。毎日、毎日、ずっと。


 ー私の居場所はここであってはならないー

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