Episode.6...Ennui likes June.
僕らの関係は本当に終わるのだろうか―――?
夜の終わりを告げるわずかな風。
僕の呼吸を告げる心臓の鼓動。
深遠―――切望は、僕らの生きていくための明日への羽になるだろうか。
遠くで虫の声が細く響く。
窓際のカーテンは、朝の気配に揺らめきながらまだ夜の冷たさを含んでいる。
沈んだ月の名残が、薄い光の端に溶けて消えゆく。
夏の夜の余韻は、冷えたグラスに溶けかかった氷のように、静かに指先に残っている。
夜の静寂が落ちた。新しい空気が、静かにそこへ流れ込む。
落ち着いた熱を持つ空気に包まれた部屋の中、本を開く。ページをめくるたび、言葉の波が静かな空気に溶けていく。
それはまるで、夜明け前の風が葉を揺らすような優しさ。インクの軌跡は、時の流れにそっと寄り添い、記憶と夢をつなぐ。
静けさと物語が絡み合うその瞬間、言葉が息をする。
街灯はもう明るみ、白く冷たい印象を受ける夜の静けさは終わり、朝の鳥たちの囀りを聞きながら、有限の時とすら思えない朝を迎える。
朝は詩的だ。
瞳を開く間に白んだ朝。
静寂に溶けるような目覚めのキス。唇の温もりが幻想を紡ぎ、それは一瞬、真実のように息をする。
その幻影は形を持ち、思考を生み、自らの意志を得る。現実の影が幻想に溶け込み、やがて、幻想は現実と見分けがつかなくなる。
ヘーゲルの自己意識。
揺らめく境界の中で、夢が現実を抱きしめる瞬間。幻想が自己を持つとき、心は静かに加速しながら、確かな輪郭を取り戻す。
まるで夜明けの風が、眠る街をそっと起こすように。
朝の静寂に包まれたまま、彼女の存在を辿る。
幻想が現実へと滲み出し、思考は形を持ち始める。かつて唇の温もりの中で生まれた幻影が、自らの意志を宿し、確かなものとなる――それが自己意識の目覚めであり、記憶が思想へと変わる瞬間。
彼女はどこへ行ったのか。何を見て、何を感じているのか。 時間の流れに取り残されることなく、半永久の輝きを持つその存在は、今もどこかで息をしているのだろうか。
朝は残酷だ。 過去を呼び覚まし、追憶の波を押し寄せる。けれど、それは同時に希望でもある。 現実に溶け込んだ幻想が、自律する意思を持ったとき――その意識は、未来へと手を伸ばす。
彼女は宝珠のような輝きをまといながら、時の向こうで微笑んでいるのかもしれない。 いつか、そのまなざしに再び出会えるだろうか。
透き通る海の底、人魚の夢が揺らめく。その幻想は確かに美しく、しかし現実はそれほど単純ではなかった。
彼女は鴎由真ではない。 誰かの代替――愛は、時に誰かの代わりとなり、誰かの記憶を埋めるものになる。 血の繋がりすら、ひとつの装飾に過ぎず、名を変え、形を変えながら並び替えられていく。
意識の奥で、思考が静かに動く。 それは自己を声高に主張することなく、ただ波のように溶け込み、かすかな軌跡を残す。 幻想が現実へと入り込み、気づけばそれが確かなものになっている―― しかしそれは、最初からそこにあったものなのか、それとも形を変えた別の存在なのか。
問いは流れの中でほどけ、ただ静かに息づいている。 まるで、深海で揺れる一筋の光のように。
『あの女性は―――?』達郎は言った。
『今はまだ、明かせません。私はあなたに会いたい』その女性が言った。
『どうして、教えてくれない。私は、多分貴女が―――』達郎は言った。
『絶対違います。一生掛けても誰とも付き合うことはありません。それだけは言っておきます』その女性が言った。『私は視界を失った邪悪な魔女。魔女裁判にあったのよ』
『どういう事?魔女の存在―――?』
『この星は太陽よりも強い電磁波の存在が確認されているわ。その電磁波によってあたしたちは赤外線を浴び、熱を帯びている。熱は浮かされ、恋を呼ぶ。しかし、その恋愛をすること自体貴男の国では多分ほぼ難しいものとなるでしょう。だから諦めるのです。魔女ではないと貴男は言うかもしれない。しかし魔性の化身はいつまでも消えない』
なんと意味深な夢があるのだろうか。自分も勉強で頭を使いすぎたのかな、と考え、これからは何も考えないような入力作業みたいな仕事に就こうかな、くらいに考える。でも入力の速度なんてどうでもいいし、単純作業は、好みでない。であれば、何か創造的な仕事―――?
パンフレット作成でもしようか。そうだ。単純な作業で創造的な仕事ができる仕事にしよう。
そう心に誓った。
朝目覚める。由真は一緒に自宅に着いて一晩中寝入っていた。朝眠たい目を擦り、顔を洗い、由真を出迎えるとあどけない猫のようにするりと僕の家の中に滑り込んだ。
きっと例の彼女こと由真は私の部屋には来ないことは知っている。しかし。彼女は、まだ私の家にいる。お風呂に入っているのをしり目にリビングで由真が朝食も食べたいと言い始めたからだ。
『少しは自重をする気はないのか、お前』
『だって美味いじゃん。アンタの母の料理』
「そうか・・・・・・あの時」
彼女はそんな理由を言って僕の帰るのを引き止めたのだろうか、と思い私は、笑顔が綻んだ。そうして、昨日のAir Cloud Spot...でのFlightを思い出せる。感情的に成りすぎた、半ば強引にRadioや、Movieを見て少し自身でも戸惑ってしまったけれど、あそこまで自身は彼女のことを真剣に想っていたんだろうか。
「いや、違うだろうな。そうか・・・・・・仕方ない」
彼女もまた本気ではないことは知っている。彼女のFlightというのは一時的な発作から来る思春期によくありがちなPatternだろうか。いや違う。彼女の目は真剣だった。
彼女の本気のうっとりとした眼。
しかしその瞬間、その瞳は、両手でこすり合わせ、痛みと戦っている。
「何?コレ」由真は言った。
「どういうこと?」
ただ戯れに狼を演じただけなのに、気づけばその振る舞いが自らの意識に染み込み、思考の奥へと沈殿していく。やがてそれはただの仮面ではなく、もうひとつの輪郭として息づく。
そして、心がふいに誰かを求める―― それは役割の延長ではなく、確かに芽生えた感情。 本当の「あたし」は誰なのか、狼の影に問いかけるうちに、境界は静かにほどけていく。
幻想と現実の間に揺れる意識は、気づかぬうちに恋をしていた。 それが真実かどうかなんて、もう問題じゃない。 ただ、夢のように呼吸している。
しかし、それを逸らさざるを得ない。彼女はきっと、僕だったから許せたのだろうか。そうではないはずだ。であれば何故?
分からない。女性というのは謎である。きっと。
「いけない。君はしてはならないことをしている。断罪すべきは僕ではない。君の存在だ」
「邪悪な化身な訳ね、あたしは」
「違う」僕はボールペンを回す。「避けないといけない。何故ならば、僕に許された社会は本来僕が生きていくために最低限の保障しかしない社会にしか属することが出来ない。戒律が定められているためだ。よって恋愛は出来ない。その代わり仕事は請け負う。幾らでも言ってくれ。メッセージ一本で承る」
そんなことを考えながら、うとうととした目覚めから顔を洗い、目が覚めると、朝食の準備に取り掛かった。
おなじみの蒸し林檎は作らない。今度は学生時代から作ったのは、回鍋肉とPasta。Pastaを作った。旬の野菜を水洗い。そして、カリフラワーを入れてみた。1つのAccentになるだろう。そして、Cabbageを少々、Tomatoは大きいSizeのものを薄くSliceして色どりに。春に食べるべきなのだろうが、鯖の残りにOnionとBlack Pepperを掛け、Cheese Onion ToastにTomatoを盛った。昼食の出来上がりだが、如何せん、和食と洋食の組み合わせでかみ合わせが悪いかと思い半ば悪気に昼食を出すと、以外に高評価で危ないところだった。母が久々口にした言葉は何かと思えば。
「また、勝手に料理したー、いい加減にして欲しいわー」
「なんだそれは。別に良いじゃないか」
「アンタが弁当買うって言うから」
「料理すると言うと一々煩くするから、嘘ついたんじゃないか」
「また人のせいにする」
「事実じゃない」
「煩くしてない。もうあたし今後から何も言わない」
どういう意味かしつこく問いたかったが、どうでもいいので辞めた。
「鵲さんはどうなの?黙って食ってるけど」
「Good job!」鴎氏はそう発言するなり、親指を立てた。何の真似だろうか。アニメにそんなシーンがあったような気もするが覚えていない。
「あぶねー、マジ朝食和食と洋食のMixだから不安だった」
「Bad job!」鵲氏はそう発言するなり、親指を下げた。それは意味が違うぞ、おい。
とにかく、昼食を食べた後、鵲氏はAir Cloud Spot...から降りた丘のlodgeで読書会を行った。今日はちなみにUOMOとスピン、ギョーム・ミョッソの夜の少女。土曜と日曜日は休日である。週休二日制ってところか。
「じゃあね!」朝日を浴びる彼女の姿はどことなく、あどけない表情をしていた。その姿を、私はスマホで撮った。
彼女の私服姿なんて未だかつて見たことなかったからだった。
「何すんの?それ」
「付き合った記念日」
「なにそれ、女々しい」
「雄々しいな、お前」
「煩いわね、サバサバしてるだけよ私」そう言って、目尻を下に下げて、Winkをする。その姿も写真に撮った。
「この写真魔」
「痴漢魔みたいに言うな」
「まあ、それもそうね。バイバイ。―――楽しかったわ」
「それなら良かった」
そんな春みたいなどこにでもあるくらいの会話に馴染んでいくのもまた一興かも知れないと思うのだ。
精神の安定も得られ、非常に私的な少女と共に、Linkし楽しいと感じている。
『バイバイ。二度と会うことは無いでしょう、貴方が男性として女性的に起こった恋愛の意識は消えないといけない
『―――そうなの?』
『多分、気づいているでしょうけれども、恋愛を消す魔法があるってことを。それを使った所為でしょうね』
『何それ?』
『それは、静かな水面のように心を整える術。自分という輪郭が崩れぬように、指先でそっと確かめ続けること。そうすれば、波は立たず、ただ透明なままでいられる』
『鏡を照らすには湖の波紋を止めること』達郎は言った。
『愛が芽吹くには、揺らぎが必要。でも、揺らぎを封じてしまえば、心はただ静寂を保つ。そうやって、誰かの影が差し込む隙間をなくしてしまえばいいの』
由真はそこまで言って歩みを止める。風は止まり、世界は穏やかで、そして…何も変わらないまま、ただ続いていく。 それは魔法ではなく、ひとつの選択なのかもしれない。
『であれば、君の責任だね、由真』
夢は醒めた。
涙が落ちた。
泣くという熱い感情をどこに落としてきたのだろう。
あの夜の電車の通う虚空。
由真の白い顔。
母の作った残りのサングリア。
どこに落としてきたのだろう?
あの時の心の闇だろうか。
それは僕しか言わない。
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