第5話 ジョブ“覚醒者”
「どけぇっ!!」
犬鹿もどきを退けようとして手を大きく振りかぶりながら起き上がると……
「
そこは真っ白なベッドの上だった。
俺の声を聞いた
「律くん、大丈夫ですか?」
「あ、ええ、あぁ。……はい。」
俺は少し混乱しながら、いまさっき自分がダイナミックにひっぺがした布団をソロソロとかけ直す。
「ええと……何から伝えましょうか。」
叶先生は少し
「まず、律くんは仮想空間の魔物に襲われて気絶してしまったんですね。
気分はどうですか?」
「ええと…びっくりしただけで、今は大丈夫です。」
「よかった。では続けますね、魔物──あれはベロアドッグというDからCランクの魔物です。
そのベロアドッグを退ける時に、律くんは“グラムソード”を魔力生成していました。」
「ぐらむそーど?」
「はい、剣士系のジョブ保持者のスキルです。」
なるほど。
「ってことは、俺って…ジョブが覚醒していたんですか?」
「そうですね。結果から言うと、ジョブがついていました。」
マジか。
去年まで魔力すらなかった俺が!?
「じゃあ俺って、剣士とか騎士とかですかね!」
前衛職なのか!とウキウキする俺に叶先生は続けて話す。
「その前にベロアドッグから逃げようとしていたのは覚えていますか?」
アレか。めちゃくちゃ全速力で逃亡したやつか。
あの場面も見られていたのは少し恥ずかしい。
「その時、“瞬足”というアサシンのスキルを発動していました。」
「アサシン?俺は剣士のスキルを使ったんじゃ…」
「はい。不可解に思っていたのですが、律くんの検査結果のジョブは───」
〜 ・ ~ ・ 〜 ・ 〜
“覚醒者 【Lv.1】”
俺は腕に着けたIDパスの液晶を見つめていた。
普通のハンターなら、“剣士”や“防護者”、“魔道士”といったジョブ名が書かれる欄のはず。
俺はその欄に“覚醒者”と記載されているのだ。
「覚醒者ってなんだよ…」
覚醒して、ジョブ保持者になるんじゃないのかよ!!
自分のジョブ名をしおしおと落ち込みながら見ていると、叶先生が戻ってきた。
「お待たせしました。ざっと調べてみましたが、過去にも“覚醒者”というジョブ保持者はいませんでした。」
「ですよね……」
さすがに聞いたことも見たこともないようなジョブ名だ。
「ですが、レベル1からジョブがついていることには変わりないですから…。」
叶先生の励ましすらも、俺への気遣いが透けて見えてツラい。
そして先生はジメジメといじける俺の横でパンっと手を叩くと、
「とにかく、ジョブがついたからには訓練を受けてもらいたいです。
ちなみに、ハンター育成校への転入かハンター管理局での訓練になりますが、どっちがいいですか?」
とふたつの書類を俺の前に
「……ハンター育成校?」
「はい、今の律くんの状況だと2年生に編入してもらう事になりますが。
今の人間関係を一新する意味でもオススメですよ。」
たしかに、今の学校では陰口を叩かれてあとの学校生活を過ごすことは目に見えている。
俺がこうなる前の姿はあまりにも有名だったからな。
転校もアリかも。
しかし、そうなると母からの学費援助は見込めないかもしれない。
「あのー…学費とかってどうなりますか?」
願わくば安くあれ…!
「私の推薦はこの2校です。」
叶先生の差し出した2枚のパンフレット。
「こちらは私立セントレアハンターアカデミア。そしてこちらは、国立帝国ハンター養成校です。
費用が気になるのであれば、国立がいいかと思いますよ。
成績がよければ学費免除や減額もありますし、才能を認められればハンターギルドからの
なるほど……。それなら国立一択、だろうな。
「よければまずは2校の見学をしますか?
費用や、減額の条件などもお話を聞けると思いますし。」
「できるんですか!?」
「はい、可能です。両校に申請と、白台門に欠席申請をしておきますから、明後日の金曜日に行きましょう。」
「わかりました!」
「では今日はこれで。寮までお送りしますよ。
明後日は朝9時ごろに寮の前にお迎えに来ますから、忘れないようにしてくださいね。」
「ありがとうございます……!よろしくお願いします。」
そうしてトントン拍子に話が進んでいく。
───今日は慌ただしい1日だったなぁ。
昨日まで何もできず引きこもっていたなんてウソみたいだ。
今の俺ならなんでもドンとこいだ!
「金曜日、学校見学。……うん、楽しみだ!」
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