第7話 その優しさは、嘘でした
お客様を呼べなければ私は「価値がない」
いつの間にか私は心を縛られていた。
お客様が来てくれた日は
自分の存在が
認められた気がして幸福感に満ちて、
お客様を呼べなかった日は
一気に自分が無価値に思えて
自己肯定感がどん底まで下がっていった。
毎日の浮き沈みした感情が積み重なって
私は自分に噛み付く自傷行為を始めていた。
噛みついた時の痛みが
生きていると感じられて辞めれなかった。
帰り道は毎日泣いていた。
私は精神不安定に陥っていた。
「もうホステスをやめたい」
初めてそう相談したのは、黒服の彼だった。
彼は全力でサポートしてくれた。
常にずっとそばにいてくれた。
その優しさが私にとって心の支えになった。
気づけば私は彼に恋をしていた。
どんどん彼に依存していった。
その頃の私は恋愛に関して
何も疑いのないただの大学生だった。
ある日、ふいに聞いてみた。
「付き合いたい。彼女いないの?」
「いないよ。でも関係を秘密にできる?」
“秘密にしないといけない恋”って何だろう。
私はホステスを辞めて
普通の大学生に戻って
ちゃんと付き合いたかっただけだった。
そして彼がお店を辞めたあと
私はようやくすべてを知ることとなる。
あのとき信じていた彼には、奥さんがいた。
混乱した私は
「彼女はいないって言ったよね?」
と連絡をし返ってきた言葉。
「彼女はいなかったよ。奥さんはいたけど。」
21歳の私にはとても大きな衝撃だった。
人は裏切るものなんだ。
私は「色恋管理」をされていた。
貰ったプレゼントも連絡も全て捨てた。
もう心を空にしよう。
そして私は、誰も信じられなくなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます