第4話 クビ宣告「明日から来なくていいです」
銀座の夜に足を踏み入れたその日
私はサンダルにTシャツ
短パン、キャップ姿で店へ向かった。
店のドアを開けるなり黒服から一言。
「全部ダメです。」
続けざまに説明が入る。
「銀座に入る時は、きれいめのワンピースにヒール。TPOを意識してください。」
店の中だけじゃない。
銀座の街を歩く時点で
すでに“ホステス”は始まっている。
そう教わった。
当時19歳の私は
そんな意識なんて持ち合わせていなかった。
「時給4000円!」
「座っていられるの最高!」
完全に“遊びの延長”の感覚だった。
本入店してもただ出勤して帰るだけ。
ガールズバーでは
お客様と連絡を取ることもない。
営業なんてしたことがなかった。
感覚としては
「仕事はちゃんとしてる」
つもりだった。
ニュークラブでは
お客様に営業をして
ご来店頂けなければいけない。
自分で指名を取らなくてはいけない。
私はそれをやろうともしていなかった。
“出勤して接客すればいいでしょ?”
そんな態度で働いていた。
お店側も最初は
見て見ぬふりをしていたのかもしれない。
——でも、限界はきた。
ある日、先輩のお姉さんに呼び出された。
「やる気あるの?何しに来てるの?」
「若いだけじゃ通用しないから。」
怖い口調でのお叱り。
そして追い討ちをかけるように
お店の人にも呼び出される。
「結果が出ないなら意味がない。お客様も呼ぶ気がないなら、明日から来なくていいです。」
と、クビを宣告された。
悔しかった。情けなかった。
でも、それ以上に
——このまま終わりたくなかった。
「絶対に私は売れる」
そのとき初めて、心の奥底に火がついた。
次の日から、私はまた
お客様の特徴を細かくメモし始めた。
——すべてを書き留めた。
当時はまだLINEではなくメールの時代。
私は“夜職専用”の携帯をもう1台契約して
その日からお客様全員にメールを送り始めた。
「今日は出逢えて幸せな日でした」
「夢に出てきました」
「また幸せを充電させてください」
小さなことでも、毎日積み重ねた。
電話も毎日全員に掛けた。
——ここから私の“銀座で生き残る”が始まった。
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