エピローグ
回想は終わった。
僕は僕を取り戻し、外界から得た情報を僕は正常に整理していく。
整理を完全に終えた僕の視界は元に戻っていて、あの夏の日に見た光景よりも残忍で冷酷な光景を僕に伝えてくる。
初めに感じた事は後悔だった。
僕は怪物の骸を見た時のように見るべきではないと分かっているのに、僕はそれから眼を離せない。
それは白いワンピースを赤く染めた顔の潰れた骸だった。
その光景を前に立ち尽くしていた時、僕の両手から何かがすべり落ちた。落としたのはジョンの墓石で赤い液体がついていて、僕の両手も赤く濡れている。
愛子ちゃんの言う通りだったんだと僕は悟った。
例えその時の記憶が無かったとしても、きっと僕はジョンを殺したんだ。
僕が悪かった、全部愛子ちゃんの言う通りだったんだ。
そういう事にして良い。それで良い。だから謝りたい、謝らせて下さい。
ねえ、起きてよ。どんなひどい事を言ってもいいから……愛子ちゃん、愛子ちゃん。
顔の潰れた彼女は動かない。声をかけても、体をゆすっても愛子ちゃんは何も言わない。
彼女の顔から流れる血、そして血で汚れた僕の手によって、白いワンピースがさらに赤く染まっていく。
恋しさを知ったあの時の夕日のようにその深い深い赤が僕に告げてくる。
とても大切で、本当に失いたくなかった時間は、もう二度と訪れないのだと。
残酷な報せを前に、僕はもうあの日に彼方へと飛ばした願いは、もうどこにも届かない事に絶望するしかなかった。
夏に現れた怪物 時間マン @zikanman
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