修学旅行3日目の夜。ハルカのクラスは、京都の古い旅館で自由時間を楽しんでいた。畳の部屋に集まったクラスメイトたちは、夕食後のまったりした雰囲気の中、誰かが言い出した。「怖い話しようぜ！」

「えー！ やめて！ 怖いの苦手なの！」

ハルカは布団にくるまりながらビビりまくる。彼女の隣で、ミキがニヤニヤしながら手を挙げた。

「じゃあ、私が話す！ 京都の旅館のトイレに…幽霊が出るって！」

「トイレ！？ 私の聖域がー！」

ハルカは絶叫し、布団をかぶってガタガタ震えた。クラスメイトたちが「ハルカ、ビビりすぎ！」「トイレ好きだな！」と笑う中、ミキが怪談を続ける。

「この旅館、昔ね、トイレで…『うらめしや～』って声が聞こえるんだって！ 夜中の12時、トイレの鏡を見ると…白い着物の女が映るの！」

「やめて！ ミキ、やめて！ トイレ行けなくなる！」

ハルカは布団の中で叫びながら、膝をガクガクさせる。だが、夕食の抹茶プリンを食べすぎたせいで、彼女の膀胱がピンチに。ハルカは布団から顔を出し、涙目で呟いた。

「トイレ行きたいけど…幽霊いたらどうしよう…！ トイレの神様、私を守って！」

隣で歴史書を読んでいたケントが、呆れた顔でハルカを見る。「佐藤、幽霊なんていない。行ってこい」

「ケント、簡単に言うけど…怖いよ！ 幽霊、絶対いる！ ミキの話、リアルすぎる！」

「リアルも何も、ミキが今適当に作った話だろ」

ケントの冷静なツッコミに、ミキが「えー！ ケント、つまんない！ ハルカ、怖がってるんだから盛り上げてよ！」と絡む。ハルカはますますパニックに。

「ケント、一緒に来て！ 怖いよ！ トイレまでエスコートして！」

「俺がトイレに付き合うわけないだろ！ バカか！」

ケントは即座に断るが、ミキがニヤリと笑って煽る。「ケント、優しいから行くよね？ ハルカ、怖くて漏らしちゃうかもよ？」

「漏らす！？ ミキ、黙れ！ でも…ケント、お願い…！」

ハルカの涙目に、ケントはため息をつきながら立ち上がる。「ったく…しょうがないな。一回だけだぞ」

「ケント、命の恩人！ トイレの神様より頼りになる！」

ハルカは感激しながらケントの後ろにくっつき、旅館の廊下へ出る。京都の古い旅館は、木造の建物が軋む音が響き、薄暗い照明が不気味な雰囲気を醸し出していた。廊下の窓からは、京都の夜景が見えるが、風で木々が揺れる音がさらに恐怖を煽る。

「うう…旅館、怖い…！ 絶対幽霊いる…！」

ハルカはケントの背中にぴったりくっつきながら、ビクビクと廊下を進む。ケントは「佐藤、離れろ。暑い」と言うが、ハルカは「離れたら幽霊に連れてかれちゃう！」と必死だ。

その時、廊下の奥から「カタッ…カタッ…」と不気味な物音がした。ハルカの顔が真っ青になる。

「ひっ！ 幽霊だー！ ケント、助けてー！」

ハルカは叫びながら、ケントにギュッと抱きつく。ケントはバランスを崩しそうになりながら、「離せ、バカ！ 落ち着け！」と叫ぶ。

「落ち着けない！ うらめしやーって聞こえた！ 絶対幽霊！」

「聞こえてない！ ただの物音だ！」

ケントが懐中電灯で照らすと、物音の正体は廊下にいた小さな猫だった。猫が「ニャー」と鳴きながら走り去るのを見て、ハルカは一瞬安堵するが…。

「猫！？ でも怖いー！ 猫の幽霊かも！」

「猫の幽霊って何だ！ バカか！」

ケントのツッコミに、ハルカは「だって怖いもん…！」とまだ震えている。だが、怖さでさらに膀胱がピンチに。ハルカは膝をガクガクさせながら、トイレに向かって走り出す。

「幽霊より膀胱が…！ トイレ、急がないと！」

ようやくトイレに着いたハルカだが、旅館のトイレは古びた雰囲気で、薄暗い電灯がチカチカしている。鏡を見るのが怖くて、ハルカは目を瞑りながら個室に駆け込む。

「うらめしやーって出ないで！ トイレの神様、守って！」

個室に入ったハルカは、なんとか用を済ませ、「生きてる…！ 幽霊、いなかった…！」と安堵の声を上げる。だが、急いで出てきたせいで、スカートにトイレットペーパーがくっついていることに気づかず、ケントの前に戻ってきた。

「ケント、ありがとう！ やっぱり優しい！ 幽霊、いなかったよ！」

「ったく、めんどくさい奴…って、佐藤、スカートにトイレットペーパーついてるぞ」

「え！？ うそ！？ 取って！ 取って！」

ハルカは顔を真っ赤にしてバタバタするが、トイレットペーパーがなかなか取れない。そこへ、部屋から様子を見に来たミキが現れ、大爆笑。

「ハルカ、トイレの妖精再び！ ケントとトイレデートして、妖精になっちゃった！」

「デートじゃない！ ミキ、黙れ！ ケント、助けて…！」

ケントはため息をつきながら、トイレットペーパーを取り外してやる。クラスメイトたちが「ケント、優しいー！」「ハルカ、トイレデート成功！」「ラブコメじゃん！」と囃し立てる。

「違うー！ ただのクラスメイト！ ミキ、黙れー！」

ハルカは顔を真っ赤にして叫ぶ。ミキがさらに追い打ちをかける。「ハルカ、顔赤いよ！ 怖い話からのトイレデート、恋のフラグ立ったね！」

「黙れ、ミキー！ 私はトイレの神様にしか惚れない！」

ハルカの叫び声に、旅館の部屋はクラスの笑い声でいっぱいになった。京都の夜は、賑やかに過ぎていく。

その後、ハルカは布団に入りながら呟いた。「ケント、助けてくれてよかった…。でも、怖かった…。トイレの神様、明日からは試練減らして…」

隣の布団で寝ていたケントが、ハルカの呟きを聞いて「次はお前が自分でなんとかしろよ」と呟く。ミキが「ハルカ、次のトイレパニックも期待してるよ！」と笑いながら言うと、ハルカは「もうパニックしない！」と叫び返す。

旅館の夜は、クラスの笑い声と共に更けていった。