第3話: 奈良で鹿とトイレパニック!
修学旅行3日目。ハルカのクラスは奈良公園にやってきた。秋の奈良公園は観光客で賑わい、鹿たちがのんびりと歩き回っている。ハルカは鹿せんべいを手に持つなり、目をキラキラさせて大はしゃぎだ。
「鹿さん、可愛いー! はい、せんべい! 仲良くしようね!」
ハルカが鹿せんべいを差し出すと、鹿たちが一斉に彼女に近づいてきた。最初は「わー! 鹿さん、私のこと好きー!」と喜んでいたハルカだが、鹿の数がどんどん増え、あっという間に10頭以上に囲まれてしまう。
「うわっ、ちょっと待って! せんべい、そんなにないよ!」
ハルカが慌てて鹿せんべいの袋を抱えるが、その拍子に袋をポロリと地面に落としてしまった。鹿たちは一斉にせんべいに飛びつき、ハルカを取り囲む勢いで押し寄せる。
「うわー! 鹿さん、怖いー! 助けてー!」
ハルカは叫びながら奈良公園の芝生を猛ダッシュ。鹿たちが「メェー!」と鳴きながら追いかけてくる。観光客たちが「可愛いね」「写真撮ろう」と笑いながら見守る中、ハルカは必死に逃げ回る。
「鹿さん、ごめん! せんべい、もうないよー!」
近くでクラスメイトたちと鹿せんべいを楽しんでいたケントが、ハルカの叫び声を聞いて振り返る。彼女が鹿の群れに追いかけられている姿を見て、呆れた顔で叫んだ。
「佐藤、せんべい捨てろ! そのままじゃ鹿に襲われるぞ!」
「鹿さんに悪いじゃん! せんべい、楽しそうに食べてたのに!」
「楽しそうにって…お前が襲われてるんだろ! バカか!」
ケントのツッコミも聞かず、ハルカは「鹿さん、落ち着いてー!」と叫びながら走り回る。だが、鹿せんべいの水分補給で飲んだ水が、彼女の膀胱に直撃。ハルカの顔が一変した。
「うっ…! やばい…! トイレ…! 鹿さん、ごめん、離して!」
ハルカは膝をガクガクさせながら、奈良公園のトイレを探して走り出す。だが、鹿たちはまだハルカを追いかけてくる。観光客の間を縫うように走るハルカの後ろで、鹿たちが「メェー!」と鳴きながら追いかける異様な光景に、クラスメイトたちは大爆笑だ。
ミキが遠くから叫ぶ。「ハルカ、鹿と一緒にトイレ行く気!? 鹿トイレパニック!」
「鹿とトイレは関係ない! ミキ、助けてー!」
クラスメイトたちも野次を飛ばす。「鹿とハルカのトイレレース!」「ハルカ、鹿の仲間入り!」「奈良公園の新名物!」と大盛り上がり。観光客までもがスマホを構えて「面白いね」と撮影を始める。
「私の人生、奈良で終わる! トイレの神様ー!」
ハルカは叫びながら、奈良公園の広大な敷地を走り回る。だが、トイレの場所が分からない。公園の案内板を見つけて立ち止まるが、膝を震わせながら「案内板…読む時間ない! 膀胱が…!」とパニック状態だ。
そこへ、隣のクラスの美咲が優雅に歩いてきた。美咲はハルカの混乱ぶりを見て、ニヤリと笑う。
「ハルカ、相変わらずね。鹿に追いかけられてトイレパニックなんて、私にはありえないわ。ねえ、ケントくん、私ならこんな失敗しないよ~」
「美咲、邪魔しないで! 私の膀胱は国家非常事態なの! ケント、助けてー!」
美咲の挑発に、ハルカは涙目で叫ぶ。ケントはため息をつきながら、ハルカに近づいてきた。
「佐藤、落ち着け。トイレはあっちだ。俺が鹿を引きつけるから、先に行け」
「ケント、命の恩人! 鹿せんべいマスターになって!」
ハルカはケントに感謝しながら、トイレの方向へ猛ダッシュ。ケントは自分の鹿せんべいを取り出し、鹿たちを引きつける。「ほら、こっちだ」と冷静に対処するが、鹿の数が多すぎて少し焦る。
「佐藤のせいで…俺まで鹿に追いかけられる…!」
ケントが鹿と格闘している間、ハルカはようやくトイレにたどり着いた。だが、個室は観光客で全部埋まっており、大行列ができている。ハルカは膝を震わせながら列に並び、叫ぶ。
「トイレの神様、奈良でも試練なの!? 鹿とトイレ、私の天敵が多すぎる!」
列の隣に並んだミキが、ニヤニヤしながら絡んできた。「ハルカ、さっきの鹿との追いかけっこ、めっちゃ面白かったよ! 動画撮っちゃった! SNSで『奈良の鹿娘』ってタイトルでバズるよ!」
「ミキ、消して! 私の名誉がー! 奈良で人生終わる!」
「ハルカ、鹿とトイレパニック、修学旅行の名シーンだよ!」
ミキのからかいに、ハルカは「うう…恥ずかしい…」と呟きながら、なんとか個室に入る。トイレを済ませた瞬間、「生きてる…! トイレの神様、ありがとう!」と叫ぶ声が外まで響いた。
だが、トイレから出てきたハルカを待ち構えていたのは、せんべいを求めてやってきた鹿たちだった。トイレの外で「メェー!」と鳴きながら待ち構える鹿たちに、ハルカは再びパニック。
「奈良、怖いー! 鹿さん、トイレまで追いかけてくるの!?」
ハルカは叫びながら再び走り出し、ケントのところへ助けを求める。「ケント、助けてー! 鹿とトイレ、私の天敵が多すぎる!」
「佐藤、俺を巻き込むな! ったく…!」
ケントは呆れながらも、残りの鹿せんべいを使って鹿を引きつけ、ハルカを救う。鹿たちがせんべいに夢中になっている隙に、ハルカはケントの後ろに隠れる。
「ケント、ありがとう! 鹿せんべいマスター! 奈良のヒーロー!」
「バカ…俺がヒーローとか、めんどくさいだけだ」
ケントはそっぽを向いて呟くが、クラスメイトたちが一斉に声を上げる。
「ケント、ヒーロー!」「ハルカ、ケントに助けられてばっか!」「奈良公園のヒーロー誕生!」
ミキがさらに追い打ちをかける。「ハルカ、ケントにデレデレじゃん! 鹿パニックで恋のフラグ立ったね!」
「違う! ただのクラスメイト! ミキ、黙れー!」
ハルカは顔を真っ赤にして叫ぶ。奈良公園の芝生を背景に、クラスの賑やかな笑い声が響き渡る。
その後、クラスは奈良公園の見学を終え、次の目的地へ向かうバスに乗り込んだ。ハルカは席に座りながら、窓の外の鹿たちを眺めて呟いた。
「鹿さん、可愛いけど…怖かった…。でも、ケントが助けてくれてよかった…」
隣の席のケントが、ハルカの呟きを聞いて「次はお前が自分でなんとかしろよ」と突っ込む。ミキが後ろから「ハルカ、次の鹿パニックも期待してるよ!」と叫び、ハルカは「もうパニックしない!」と叫び返す。
バスの中は、クラスの笑い声でいっぱいだった。
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