第2話: 京都でトイレ迷子!

修学旅行2日目。佐藤ハルカのクラスは、京都の清水寺を見学中だった。秋の京都は紅葉が美しく、観光客でごった返す境内を歩きながら、ハルカは目をキラキラさせていた。

「うわー! 京都最高ー! 清水寺、めっちゃ綺麗! 紅葉が映えるー!」

ハルカは手に持った抹茶ソフトクリームをペロリと舐め、幸せそうな笑顔を浮かべる。彼女の隣を歩く藤原ケントは、ガイドブックを手に真剣な表情で清水寺の歴史を読み上げていた。

「清水寺は794年に創建されて…佐藤、ちゃんと聞いてるか?」

「聞いてるよー! でもさ、抹茶ソフト、めっちゃ美味しい! ケントも一口食べる?」

「いらない。ていうか、お前、さっきから3個目だろ。食べすぎだ」

ケントの冷静なツッコミに、ハルカは「抹茶は京都の味! 食べなきゃ損じゃん!」と笑いながらソフトクリームを頬張る。だが、その直後、彼女の顔色が一変した。

「うっ…! やばい…! トイレ、トイレどこ!?」

ハルカの膝がガクガクと震え始め、ソフトクリームを持った手がプルプルと揺れる。抹茶ソフトの水分が、彼女の膀胱に直撃したのだ。

「抹茶ソフトの呪い! 美味しいけど裏切られたー!」

「佐藤、落ち着け。案内板見ればトイレの場所くらい分かるだろ」

ケントが冷静に言うが、ハルカはすでにパニック状態。両手でソフトクリームを握り潰しそうになりながら、清水寺の広い境内をキョロキョロと見回す。

「案内板なんて読む時間ない! 膀胱が爆発する! トイレの神様、助けてー!」

ハルカは叫びながら、境内を猛ダッシュで走り出した。紅葉を背景に、観光客の間を縫うように突っ走る彼女の姿に、クラスメイトたちは呆れ顔だ。

「ハルカ、またトイレパニック!?」

「修学旅行中くらい我慢しろよー!」

クラスメイトの野次が飛ぶ中、後ろを歩いていた悪友のミキがニヤニヤしながら叫ぶ。

「ハルカ、そっち男子トイレだよ! 突撃する気!?」

「え!? うそ!?」

ハルカは慌てて立ち止まり、振り返る。確かに、彼女が向かっていたのは男子トイレの入り口だった。観光客のおじさんが「ん?」と怪訝な顔でハルカを見る。

「違います! 私は女子です! ごめんなさいー!」

顔を真っ赤にして引き返すハルカに、クラスメイトたちは大爆笑。ミキがさらに追い打ちをかける。

「ハルカ、男子トイレの勇者! 動画撮っちゃった! SNSに上げよー!」

「ミキ、消して! 私の黒歴史増やす気!?」

ハルカが絶叫しながらミキに飛びかかろうとするが、その瞬間、観光客の団体に押されてバランスを崩し、ケントにドーンとぶつかってしまった。

「うわっ! 佐藤、どこ見てんだ!」

「ごめん! でもトイレ…! 膀胱が…! 助けて、ケント!」

ハルカは涙目でケントの腕を掴み、必死に訴える。彼女の必死な顔に、ケントはため息をつきながらも仕方なく手を差し伸べた。

「ったく…しょうがないな。トイレ、こっちだ。案内してやる」

ケントはハルカの手を引っ張り、観光客をかき分けてトイレの方へ向かう。ハルカは「ケント、命の恩人! トイレの神様より頼りになる!」と叫びながら、ケントの後ろをついて行く。だが、観光客でごった返す境内はまるで迷路のようだ。ケントが案内板を確認している間に、ハルカは「もう限界! 限界!」と膝を震わせ、勝手に走り出してしまった。

「佐藤、勝手に動くな! 迷子になるぞ!」

「ケント、時間ない! 膀胱が国家非常事態なの!」

ハルカは叫びながら、清水寺の舞台の下をくぐり、木立の中を突っ切る。だが、トイレは一向に見つからない。代わりに、彼女がたどり着いたのは、お土産物屋の前だった。

「トイレ…じゃない! 抹茶のお菓子!? いや、今は抹茶いらない! 裏切り者!」

ハルカが抹茶菓子のパッケージを手に叫ぶ姿に、店員さんが「試食いかがですか?」と笑顔で声をかける。

「試食どころじゃないです! トイレどこですか!?」

「トイレなら、あっちの階段を上がって…」

店員さんの言葉を最後まで聞かず、ハルカは「階段!?」と絶望的な声を上げながら走り出す。だが、階段を駆け上がった先にあったのは、またしても男子トイレだった。

「また男子トイレ!? トイレの神様、私を試してるの!?」

ハルカが叫びながら引き返そうとした瞬間、ミキとクラスメイトたちが追いかけてきて、再び大爆笑。

「ハルカ、男子トイレ2連チャン! 記録更新!」

「ハルカ、男子トイレマスター!」

「やめて! 私の名誉がー!」

クラスメイトの野次に、ハルカは頭を抱えて叫ぶ。そこへ、ケントがようやく追いついてきた。ハルカの混乱ぶりに呆れながらも、彼女の手を再び引っ張る。

「佐藤、落ち着け。女子トイレはこっちだ。ちゃんと案内板見ろって言っただろ」

「ケント、ごめん! でも、膀胱が…! もう限界!」

ハルカは涙目でケントにすがりつき、ようやく女子トイレにたどり着いた。だが、トイレは観光客で長蛇の列。ハルカは膝を震わせながら「トイレの神様、京都でも試練なの!?」と叫ぶ。

隣に並んだミキが「ハルカ、さっきの男子トイレ突撃、めっちゃ面白かったよ! 動画、絶対バズるって!」とニヤニヤしながらスマホを構える。

「ミキ、消して! 私の人生終わる!」

「ハルカの膀胱パニック、修学旅行の名シーンだよ!」

ミキのからかいに、ハルカは「うう…恥ずかしい…」と呟きながら、なんとかトイレに突入。個室に入った瞬間、「生きてる…! トイレの神様、ありがとう!」と叫ぶ声が外まで響いた。

だが、急いで出てきたハルカ、スカートにトイレットペーパーがくっついていることに気づかず、ケントたちの前に戻ってきた。ミキがそれを見て大爆笑。

「ハルカ、トイレの妖精みたい! スカートにトイレットペーパーついてるよ!」

「え!? うそ!? 取って! 取って!」

ハルカは顔を真っ赤にしてスカートをバタバタさせるが、トイレットペーパーがなかなか取れない。クラスメイトたちが「トイレの妖精!」「ハルカ、妖精デビュー!」と囃し立てる中、ケントがため息をつきながら近づいてきた。

「佐藤、動くな。俺が取ってやる」

「ケント…! ありがとう…! 命の恩人その2!」

ケントがトイレットペーパーを取り外してやるが、その瞬間、クラスメイトたちが一斉に声を上げる。

「ケント、優しいー!」

「ハルカ、ケントに助けられてばっか! ラブコメじゃん!」

「ケント、トイレの妖精の王子様!」

「黙れ! ただのクラスメイトだ!」

ハルカは顔を真っ赤にして叫ぶが、ミキがさらに追い打ちをかける。

「ハルカ、顔赤いよ! 恋のフラグ立ったね!」

「ミキ、黙れー! ケント、助けてくれてありがと…でも、恥ずかしいよ…」

「ったく、バカだな…」

ケントはそっぽを向いて呟くが、口元には微かな笑みが浮かんでいた。清水寺の紅葉を背景に、クラスの賑やかな笑い声が響き渡る。

その後、クラスは清水寺の見学を終え、次の目的地へ向かうバスに乗り込んだ。ハルカは席に座りながら、窓の外の紅葉を眺めて呟いた。

「京都、綺麗だけど…トイレ多すぎ…。でも、ケントが助けてくれてよかった…」

隣の席のケントが、ハルカの呟きを聞いて「次はお前が自分でトイレ見つけろよ」と突っ込む。ミキが後ろから「ハルカ、次のトイレパニックも期待してるよ!」と叫び、ハルカは「もうパニックしない!」と叫び返す。

バスの中は、クラスの笑い声でいっぱいだった。


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