信頼できる親友に、精一杯の好きを。

「……そっか、うん、うん。…親友になれたんだな。……え?うん、今日だよ。ははっ、ありがとなモカ。……頑張るよ」

モカとの電話を切り、教室へ戻る。

高校入試に備えて生徒たちは早々に下校し始めていた。

その中を沙樹は逆走していく。

「お待たせ、ミア」

「遅いよ。モカちゃんから?」

「そう。…悪い待たせて」

「話って?」

カバンを取り上げて、彼女は教室のドアを閉めた。

「好きだ」

「……え?」

「好きだよ。大好きだ。ずっと…伝えたかったんだ」

ミアは目を丸くして固まっている。

しばらく、視線を彷徨わせてから真っ直ぐに沙樹を見た。

「……私も、沙樹が好き」

「……………」

息が止まった。ドサッと、カバンが落ちる。

次の瞬間にはミアを抱きしめていた。

ー届いた。本当に、届いた。

叶わないと思っていたのに、彼女も沙樹を好きでいてくれた。

その事実が嬉しくて、ミアを強く抱きしめる。

彼女もギュウと抱きしめてくれた。

しばらくミアと抱き合っていると、廊下から足音が聞こえて来た。

パッとミアを離して、カバンを拾い上げる。

「………先生かもしれないから、後ろのドアから出よう」

「……………うん」

彼女の手を取り、教室の後ろのドアを開けた。

廊下を歩き、昇降口を出て早足で歩く。

「ねぇ、沙樹」

「何?」

「何で、早歩きしてるの?先生、もういないよ?」

「……あ」

ピタリと足を止めると、彼女も立ち止まる。

おかしそうにクスクスと笑うミアを見て、緊張が解けていくのを感じた。

「ミア」

「ん?」

「大学でも、よろしくな」

「もちろんだよ!」

屈託なく笑うミアの頭を撫でて、手を繋いだまま家路についた。

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