第6話 兵隊さん

 外に出てみると、雪は降り続いているため景色は真っ白になっていました。

 人々は襟を掻き合わせて急ぎ足で歩いていきます。

 でも不思議なことに、誰も雪だるまのような王子に興味を持ちませんでした。

 雪の中を三人と背負われたマモルは傘をさして練兵場まで歩きます。

 手も足も凍るように冷たいはずですが、珍しくスエコは愚図りません。ちゃんと歩いてついてきます。

三人はしばらく歩いて練兵場の入り口に着きました、

 サキエは門番の兵隊さんに声かけます。「こんにちは、お願いがあってきたのですが」

 門番の兵隊さんは三人を見て厳しい声で、

「子供の来るところじゃない。早く家に帰りなさい」と言いました。

 サキエはあきらめずに兵隊さんにお願いを繰り返すと、もう一人の兵隊さんが、

「お嬢ちゃんたち、ココは君たちのお願いを聞いてあげる所じゃないんだよ、学校の先生にお願いをしなさい」と言いました。

 三人はもうどうすることも出来ずに、雪の中で立ち尽くしていると、一台の自動車がやって来ました。

 二人の門番の兵隊さんは、急いで姿勢を正すと敬礼をします。

 すると、自動車はゆっくりと門の中に入っていきました。

 しかし、急に自動車が止まって後ろのドアが開き一人の兵隊さんが降りて来くると、門番の兵隊さんと何か話をしました。

 兵隊さんが自動車に戻ってしばらくすると、自動車がバックして門まで戻ってきました。

 そして自動車が止まると後ろのドアが開いて、さっきの兵隊さんと一緒に少し年取った兵隊さんが自動車から降りてきました。

 そして年取った兵隊さんがサキエたちの所にやってくると言いました。

「何か大切なお話があるそうだね」

 サキエは丁寧に深くお辞儀をして王子様を紹介して、今までのいきさつを年取った兵隊さんに話しました。

 すると横からスエコが

「王子様ヒコーキ乗って帰るの、雲の上に帰るの」と言いました。

                               つづく

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る