第11話 記憶の破壊
長野の静かな夜、コナンと灰原、そして高明が集まる中、何とも言えない緊張感が広がっていた。資料に記された「最終段階」の文字が、すべてを物語っているようだった。もし、この研究が進めば、ただの記憶操作ではなく、人格そのものが消されるという事実。最悪の事態が迫っている。
「記憶を完全に消去する技術、まさかそんなものが実在するとは…」
灰原が、資料に書かれた内容を慎重に読み返す。
「でも、どうして黒の組織はこんなものを?」
高明が苦しげに言う。
コナンはその言葉を聞きながら、目の前の機器に再び目を向ける。どうして黒の組織が、最終的に人間の記憶を完全に操ろうとしたのか。その目的がはっきりしないままでいることが、彼をますます悩ませる。
「‘Eclipse’はただの記憶操作装置じゃない、灰原。あれは、世界を変えるための道具だ。組織はそれを使って、世界の支配を目論んでいるんだ」
灰原が深いため息をつきながら言う。
「それに、‘Eclipse’の最後の目的が記憶の消去だったとしたら…つまり、ある人物の過去や思想を完全に消し去り、新しい人間に作り変えることができるということよ。これが成功すれば、普通の人間の意識を操るだけでなく、世界全体を変えることだって可能になる」
「まさか、その力で組織のトップすら変えようとしているのか…?」
コナンの言葉に、高明がゆっくりと頷く。「確かに。それが黒の組織の計画なら、あまりにも危険だ」
その時、突然、部屋の奥でガタッと音がした。誰かが近づいてきたのだろうか?
コナンは素早くその音の方向に目を向け、周囲を警戒する。だが、目の前に現れたのは、長野警察の捜査員だった。
「コナン君、高明さん、状況が変わった。さっきから目撃された黒い車の情報を掴んだ。おそらく、‘Eclipse’に関連している人物が接触している」
その一言に、コナンの体が反応した。「それは…黒の組織の人間だ」
「恐らくそうだ。車の動きが非常に怪しい。君たちも急いだ方がいい」
捜査員は続ける。
コナンは灰原と高明を見渡すと、すぐに立ち上がった。
「行こう。もう時間がない」
⸻
数分後、コナンたちは長野の街外れの一角で、黒い車を発見した。その車は、誰かが降りた形跡があり、隠れるように停められている。
「これが…‘Eclipse’に関与している人物の車か?」
高明が車を見つめる。
「間違いない。周囲を見張らないと」
コナンが静かに答えた。だが、その時、背後から足音が近づいてきた。
「気をつけろ、コナン君」
灰原が警戒を促す。
その瞬間、突然、近くの建物から不自然な物音が聞こえる。コナンは素早くその方向に目をやった。
「ここには何かがある」
コナンの目線がピンと定まった。
「地下道…か?」
灰原がつぶやいた。
彼らが目指していたのは、地下道だった。黒の組織がこの地域を拠点にしていた証拠が、今まさに目の前に現れようとしていた。
コナン、灰原、高明の3人は、慎重に地下道へと足を踏み入れる。闇に包まれたその場所には、見えない恐怖が潜んでいた。地下の奥に進むにつれて、足音だけが響き、さらに不気味な静けさが広がっていた。
「この道を進めば、何かが待っているんだろうな」
コナンは独り言のように言った。
突然、地下道の先から光が漏れ始める。やがて、その光の先に見えるのは、大きな鉄扉だ。
「これが…‘Eclipse’の最終施設?」
高明が呟いた。
扉の向こうから、誰かの声が聞こえてきた。それは低く、そして不気味な響きを持っていた。
「君たちも、最後の試験に来たのか?」
その声を聞いたコナンは、思わず息を呑んだ。声の主が誰であるか、直感的に理解したからだ。
「まさか、君が…」
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