第5話 もうひとつの選択

夢洲での烏丸復活事件から数日。

大阪万博の表向きは何事もなかったかのように続いていた。

しかし、裏では公安、FBI、黒の組織、そして名探偵たちが、静かに動き出していた。


 


■ 赤井秀一、動く


大阪市内某所。

赤井秀一は愛銃ライフルの手入れをしながら、報告を受けていた。

相手は、妹・世良真純。


 


「まさか烏丸蓮耶が“再生”されたなんて……信じがたいよ」


「だが、事実だ。バイオドームの研究記録、内部からハッキングして手に入れた」


世良は苦い顔でタブレットを見つめる。


「問題は、その存在を“誰が”意図して蘇らせたかだよ、兄さん」


 


赤井は静かに立ち上がる。


「恐らく、ベルモットではない。あの女は感情で動く。烏丸を“母として”育てることに、矛盾を抱いているようだった」


「じゃあ、黒幕は……?」


 


赤井は一言、呟いた。


「……組織の“新しい幹部”だ。おそらく、まだ姿を見せていない」


 


■ 服部平次の疑念


一方、探偵・服部平次と遠山和葉は、万博警備チームに協力し、現場検証を進めていた。


「ここや……この床、焼け焦げた跡がある。高エネルギー反応やな」


「人工的に成長促進されたにしては、かなりムリがあるわね」


 


そのとき、一人の男が現れた。


「まいど。ちょっとええか?」


「……誰やアンタ?」


「公安や。降谷零……って言うたら通じるか?」


 


公安・安室透=バーボンが、警察の権限を持って接触してきた。


「君たちに頼みがある。今後、“灰原哀”を守ってくれ。

この世界で彼女ほど、烏丸を止められる存在はいない」


 


服部の目が鋭くなる。


「ほな、今度の事件、ほんまに“世界の命運”かかっとるんやな」


 


■ 灰原のもうひとつの研究


阿笠邸、地下ラボ。


コナンが訪ねると、そこには精製された試験管と、白いカプセル状の薬が並んでいた。


 


「これは……?」


 


灰原は静かに答えた。


「アポトキシン4869を“解毒する”反応式。

いや、正確には……“成長を任意に制御できる”再構築薬よ」


 


「まさか、烏丸に?」


「そう。彼は赤ん坊のままにしておくべきだった。だけど今、彼は成長し、自分の意思で行動し始めている。

ならば、こちらも“成長を逆流させる”方法を用意しなくてはならない」


 


コナンは目を細めた。


「それってつまり……“時間を巻き戻す薬”ってことか?」


「今はまだ理論段階。でも、彼を止める手段はそれしかない」


 


灰原は、自らを見つめながら呟く。


「私はもう、逃げない。組織からも、アポトキシンからも、そして……過去からも」


 


■ 烏丸、再び姿を現す


そして万博5日目。

未来AIパビリオンで、突如プロジェクション映像がジャックされる。


 


スクリーンに映ったのは、20代後半と思しき漆黒のスーツをまとった男。

その瞳には、人間らしい感情はなかった。


 


「皆の者。目覚めよ。

私は“時間の外”から帰還した存在──烏丸蓮耶だ」


 


騒然とする会場。

だがその言葉は明瞭だった。


 


「我が肉体は滅び、意識は断たれた。だが、科学と執念は、再び我をこの地に呼び戻した。

これは新たな秩序の誕生である。


2025年4月19日──新世界の“起源”は、ここにある」


 


その瞬間、パビリオン全域が停電。

爆発音と共に、施設内のAI制御がすべてジャックされる。


 


コナンが叫ぶ。


「くそっ、やられた! 奴の目的は……万博の“全ての知能”の支配だ!」


 


灰原が立ち上がる。


「コナン君、選んで。

このまま“未来”を支配されるのか、それとも……時間を取り戻すかよ!」


 


物語は、次なる転回点へ。

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