第4話 封印破り

夢洲バイオドーム、深夜2時。

警備員の目を盗み、数人の黒服が静かに動いていた。

その中心には、ある特殊なカプセルが存在する。


中で眠る“赤子”。

いや──それは、**かつて烏丸蓮耶と呼ばれた男の“再生体”**だった。


 


■ ベルモットの決断


「止めなさい、ラム。彼を目覚めさせるにはまだ早い」


ベルモットの声はかすれていた。

仮面の男・ラムは無言でカプセルを見下ろしながら、ボタンに指を伸ばす。


 


「お前は母親面をしているが……これは“計画”だ。時間だ」


「でも、もし彼の記憶と意識が完全に戻ったとき、彼が何を望むか、分かっているの?」


「“秩序”だ。混沌の時代を終わらせる王が、帰ってくるだけだ」


 


ベルモットは小さく笑った。


「だったら、コナンに滅ぼされるだけね──その未来、あたしは何度も見た」


 


■ 封印の破壊


パビリオン内に異変が走る。

施設の外では、大量の見物人が未明のテクノロジーショーを見守っていたが、急に光が走り、異音が響く。


 


「制御不能! 成長抑制装置が破壊されました!」


研究スタッフが叫ぶ。


そして──


 


カプセルの中の赤子が、目を開いた。


黒く濁った瞳。

周囲の光を拒むように、ただ一点を睨みつけている。


「……生まれた、のか」


まるで誰かがつぶやいたように、関係者全員の鼓膜を震わせた。


それは──**意識が“喋った”**のだ。


 


■ 工藤優作、語る


そのとき。

警備を突破したコナンと灰原、阿笠博士、そして工藤優作がパビリオンに駆け込む。


 


「止めろ! これはまだ実験段階のはずだ!」


 


ラムが振り返る。


「お前たちは、我々の歴史に介入しすぎた」


 


工藤優作が前に出る。


「ラム。君は“あの方”を復活させることで、自分が“器”になるとでも思っているのか?」


ラムの眼が揺れる。


「……なぜそれを?」


「私は作家だ。誰よりも、“物語の結末”を知っている」


 


そのとき、再びカプセルが光を放った。

幼児の姿が、急速に成長していく。骨格が変わり、肉がつき、声が、言葉になり始める。


 


「我が名は……烏丸蓮耶。此度の目覚め、いかなる因果か」


 


灰原が震える。


「ダメ……意識が完全に戻った……!」


 


■ コナンの決意


コナンは一歩踏み出す。


「お前が目覚めたとしても、俺はお前を“人間”として扱う。

殺しはしない。だが──もうこれ以上、誰も傷つけさせない!」


 


烏丸はコナンを見据え、微笑んだ。


「小僧……お前、まさか“あの血筋”か……」


 


場が凍る。

まるで烏丸は、コナン=工藤新一の“来歴”を知っていたかのように。


 


「名探偵よ、選べ。世界を継ぐのは、お前か。私か」


 


その言葉を最後に、再成長した烏丸は組織の手により移送され、姿を消した。


 


物語は、次の局面へ──。

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