第五頁 物語の火蓋は切られた その5
発動、失敗、発動、失敗、発動、失敗、発動、失敗、発動、失敗。
一向に成功する気配は無い。けれど、僕は徐々に確信し始めていた。この
発動、失敗、発動、失敗、発動、失敗、発動、失敗。
そうしている内にいつの間にか、僕の姿は
「っ!?」
弾が煙の中を突き進み、僕へ直撃したかと思われた後、弾は徐々に風と同化していき、煙は魔力弾の風圧によって霧散した。そして、結果が
それを見て赤目は驚いているようだった。なぜならば煙が晴れた先、僕が元いた場所であるそこには、
「しまった、煙幕代わりか!」
そう、煙幕だ。正直
しかも偶然か必然か、赤目の放った魔力弾が風属性だったこともあり煙は霧散し、僕が歩いたルートを示す黒煙も跡形も無く消え去った。これで赤目は僕のことを見失った。赤目のやつに、隙ができたのだ。
魔法が使えないなら使えないで、失敗だらけなら失敗だらけで、方法はいくらでもある。これが僕にとってのその方法だ。
「くそ、どこだ! どこにいやがる!」
「ここだ!」
「なにっ!?」
僕が居たのはそう、木の上である。先程僕の魔力弾が衝突した木の上、ここなら赤目の死角から一気に近づけると踏んだ。
赤目が僕の声に気づいて振り返った先、僕は木の上から
僕は、パラメラを取り返したのだ。
僕はパラメラの体をこれ以上ないくらいに抱きしめる。自分も苦しくなるくらいに。まだパラメラは起きていないようだから、起きたらまた抱きしめることにしよう。
ただ、この後は少々怪我をしつつもパラメラを庇いながら着地し、そのまま逃げればいいと思っていたのだが、僕も詰めが甘かったようで、そう上手くはいきそうになかった。
横を見ると、赤目は魔力弾を僕に向かって撃つ構えに入っていた。まだ体の向き的に撃てはしないだろうが、僕がパラメラを庇いながら着地して無事に逃げられるような余裕もない。万事休すだ。
「こんの泥棒やろうがぁ!」
確かにこいつは隙を見せた。だというのにこの反応速度だ。これはもはや執念に近いものだろう。こいつにとってパラメラは、それほどまでに執着できる獲物なのだろうか、余程腹でも空いてたのだろうか。その真意は定かでは無いが、その執着心故にここまで動いてるのは事実だ。
トキメラもまだ来ていない。パラメラも起きていない。周囲には他の人影も見当たらない。
やっぱり、僕はダメなやつだ。僕一人じゃ何もできない。一番大切なパラメラでさえも守ることができない。
ごめんよパラメラ……ならせめて、少しでもダメージを押さえられるように。
そう思い、僕はパラメラの体を赤目から覆い隠すようにして抱きしめ、うずくまろうとした。
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