太陽
子供の頃、何になりたかったかって惑に聞かれた。俺はしばらく考えたけど、何も思い出せなくて、わかんないなと答える。
とにかく二丁目で働きたかった。それだけは覚えている。それがいつからだったのかは、もう覚えていない。初めて二丁目の存在を知ったときには、もうそこで生きていくと思っていた気がする。多分、俺はそういう風にしか生きられないように設計されていたのだ。
惑が帰った後、俺はベッドサイドの棚に手を伸ばしてスマートフォンを手に取った。メッセージが届いていたけれど、惑からの励ましの言葉だけだった。俺はスマートフォンを元の場所に戻した。
あれからいっぱいメッセージが来た。いろんな人が見舞いに来た。だけど俺には分かった。その誰しもの、どの言葉も嘘っぱちばかりだった。彼らは決められた役割を、しょうがなく演じているだけ。あなたはかわいそうな人、私はそれを気遣う人。本当の俺の心の傷に触れてくれる人間なんて、誰もいなかった。俺の心に開いた穴を埋めてくれようとする人は、誰もいなかった。
誰も俺の話を聞いてくれなかった。
先ほどまでそこにいた惑のことを思い出す。惑の目を思い出す。お前は俺のことを、そんな目で見ないと思っていた。どんなに惨めになろうとも、どんなに汚辱に塗れようとも、お前だけは俺を眩しく見上げてくれる。そんな気がしていたんだ。
つまり、俺はお前を頼ったのだ。だけど病室に来たお前は、他の見舞いに来た誰とも変わらないあの目をしていた。俺はそれを見て、お前に何をいえばいいのか分からなくなってしまったんだ。
お前が帰って、俺は理解する。
俺はきらびやかな世界に住んでいて、俺の周りにはいつも人が絶えなくて、俺は魅力的な体をしていて、みんな俺とセックスしたいに違いない。
それは見せかけだけの世界だったのだ。
誰も俺の本当の気持ちを知ろうとしない。誰も俺の隣に本当に立ってくれない。
俺は光ることのできない偽物の太陽だった。俺の周りには、一つも星が回ってない。惑星のない太陽。それが俺だった。
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