第17話
50
7月6日
「西村、話がある。」
「なんだ、おまえらしくない
真剣な顔して。」
「明日からは、おまえが杏奈を守ってくれないか?
明日で俺消えてしまうからさ。」
「今まで、おまえがここにいた事が不思議なんだ、
もちろん分かってるよ。」
「そのー、
できるなら結婚とかして、杏奈を一生幸せにして欲しい。」
「何言ってんのおまえ?」
「俺、チュウしただけだから
それ以上手を出していないから、
だからそれ以上のことはおまえに譲る。」
「はあ?
自分で何言ってるか分かってんのか?」
「俺は杏奈を守らなきゃいけないから、
それ以上は許さない。
お前は信用できるから、それ以上を許す。」
「許すったって、そんな事できる訳ないだろ!
おまえ何考えてんだ!」
「すごく考えたんだ、
それが杏奈が一番幸せになる方法だろう?」
「おまえすげーな
女のために神様になっちまったのかよ。
考えることはポンコツだけどな。」
「俺は本気だ。凄く真面目なんだ。」
「うちのスナックで
兄ちゃんたちの持ってきた無修正本を
ガン見していたやつの言うことか。
分かったよ、考えておく。」
(まったく、無理しやがって)
51
「ふっふっふ、あーんな!」
理沙が声を掛けてきた。
「明日は河野と花火大会デートなんだろ?」
「ふふふ、去年から約束してたのよ。」
「じゃあ、思い切りおしゃれして行かなくちゃ、
ねー」
「そう、そのつもり」
「あいつ、驚かせてやれよ、
もう天国になんか行きたくないってほどに」
「そうしたら、まだずっとここにいてくれるかな?」
「へへ、そうかもな。」
52
「あ、あ、杏奈ちゃん?」
河野はそれ以上言葉が出てこなかった。
「どうだ、杏奈綺麗だろう?」
「あー」
何も言わず、ただコクコクとうなづいていた。
「これ、カツラじゃないのよ
理沙に紹介してもらったお店でカットして貰ったの
後ろの方は少し毛を足してるけど。」
前下がりの真っ直ぐなショートボブヘア、
濃紺地に流水模様の浴衣、
スタイルブックからそのまま抜け出してきたような杏奈には河野ばかりでなく、西村も驚いていた。
理沙の提案で
縁日の屋台は、4人で回った。
他の人には見えない河野と杏奈2人きりでは
人混みでは不思議に思われるから。
「杏奈ちゃん、驚いた、
女の人って、髪型で変わると思ってたけど、
今日は、何か大人っぽいと言うか、その色っぽいというかー」
杏奈はうふふと笑った。
「大野は今年は去年みたいな半乳の浴衣じゃないのか?」
「ありゃ、途中で着崩れてはだけたんだよー
今年は2人で着付けの人にお願いしたから。」
「ふーん、それにしてはー」
「何だよ杏奈とくらべるなよ、
んじゃ、私らはここで別れるから、
あとは2人ずつでデートな、
あんまり人混みに行くなよ。」
「理沙、色々ありがとう、
じゃあね。」
杏奈はにこやかに手を振った。
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