第2話 公明党の支持者

それから僕は鈴木君の部屋に毎朝毎晩通って、勤行のやり方を鈴木君から教えてもらった。


同じ学生寮に住んでいて、僕の部屋と鈴木君の部屋はすぐ近くなので、その点はラクだった。


若いというのは素晴らしいもので、僕は2~3日で、1人で勤行ができるようになった。


そして、今度は座談会の参加だ。


夏休みが始まる少し前、当日の授業が終わってから、僕と鈴木君で座談会に行くことになった。


座談会をやる家は歩いて行ける距離ではないらしい。


僕も鈴木君も自動車を持っていなかったのだが、鈴木君は大学の先輩から自動車を借りたそうだ。


そして、鈴木君は僕をその自動車に乗せて座談会が行われる家に向かった。


しばらくして僕達は目的の家に到着した。


それは普通の住宅のように見えた。


鈴木君は道路の脇に駐車して


「降りて」


と僕に言って、鈴木君も自動車を降り、鈴木君はスタスタと歩いてその家の玄関を開け


「こんばんはー!」


と叫んでから、どんどん家の中に入って行った。


僕もそのあとに続いたが、チャイムも鳴らさず他人の家に入って行くことに戸惑いを感じた。


鈴木君と僕が部屋の中に入った時、10人くらいのオジサン達が輪になってあぐらを組んで座って、何かを話し合っていた。


蛍光灯が古くなっていたのか、その部屋は薄暗かった。


鈴木君と僕もその輪に加わった。


僕もオジサン達の話を聞いていたが、彼らは全員、公明党の支持者であるようだった。


そして、彼らが話していることは僕にはよく分からないことだった。


僕は不思議に思った。


人が10人集まったら、支持率からいって、2~3人は自民党の支持者、2~3人は野党の支持者、その他は無党派層のはずだ。


皆の話がひととおり終わると、中心者らしき人が僕に発言を求めた。


僕がへどもどしていると、鈴木君が


「この人はまだ入信したばかりで、何も分からないから」


と言い、中心者らしき人は


「あっ、そうか」


と言って話をまとめて、その日の座談会は終了ということになった。


その後何があったか、僕はほとんど忘れたが、帰りの車の中で


「日蓮仏法の話があるかと思っていたのだがな」


と、僕が不平を言うと


「近々選挙があるからな」


と、鈴木君が答えたのを僕は覚えている。


それにしても、創価学会は公明党の支持母体である、ということも知らずに、創価学会にホイホイと入会してしまう僕もうっかり者だ。


これからは、物事を決める時には、よく考えて調べてからにしなければいけないと、僕は反省した。

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