翠風のウリン
天瑶
風向、変ず
第0話 懐旧
世界には最初に、混沌があった。その中で二柱の神々、大地シーブと天空アセマーンは混ざり合っていた。この二柱の神々から、神々が生まれた。初めに太陽が、次に月が生まれ、知恵、時、火と続いた。
父神は子らの誕生を
朝日が差す厳粛な神々の間にて、
鳥のさえずりや街の
程なくして足音が聞こえ、
「お支度整いましてございまする」
「そうか。では行こう」
男はレリーフに背を向け、王の間に向かって歩き出す。吹き入れる
王宮の外は、地平線までみなぎり渡るかと思われるほどに、生気が
ヤシの木々や美しい紋様のシェードが風にそよぎ、その下では人々が市場を忙しなく行き交っている。露店には焼きたてのパンや瑞々しい果物が、今まさに並べられているところだった。光沢あるサテンが風に揺れ、豊かなスパイスの香りが、街に満ちている。
風の国ヴァーナ――風神の加護のもとにて栄えた国である。
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