第10話 “あの朝”の余韻と、視線と、秘密

朝。


「……ん、んん……」


目を覚ました俺の視界に、最初に飛び込んできたのは——

ルイの寝顔だった。


すぐ隣で眠っている。距離、ゼロ。


ていうか、昨夜……あんなことがあって……


(うわああああああああああ!!!)


脳内でアラートが鳴りまくる。

身体が火照って、背中に汗が滲む。


「ま、マジで……夢じゃないのか、アレ……」


ルイの寝息。

胸の起伏(中身はフラットだけど、雰囲気で負ける)。

そして——布団の下から、何かが“もこっ”と盛り上がっている。


(お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!?!?!?)


俺の理性が今にも崩壊しかけた、そのとき。


「……おはよう、はると♥」


ルイが、目を開けて、微笑んだ。

ベッドの中、軽く寝癖がついた金髪がやけに無防備で、無駄に色っぽい。


「……見てたでしょ? 私の……“もっこり”」


「ちょっ、声でかいっ! やめろっ!!」


「ふふ♥ 照れてる照れてる〜」


布団の中から“それ”を隠すようにルイが脚を閉じるけど、すでに遅い。

俺の脳裏には、ばっちりインプットされてしまった。


(……ルイの、朝立ち)


「……見た分、責任とってくれる?」


「責任ってなんだよ!?」


「うーん、たとえば……今夜もお泊まり、ってのは?」


「やめろー!! 昨日あんなことしたばっかりだろー!! 心臓もたねえー!!」


「じゃあ、私の家に来てくれる? 次は、私のベッドで……♥」


「ルイーーーーーーーー!!!!!」


そして、学校。


「おーい、陽翔ー! またルイちゃんと一緒に登校してんのー?」


「い、いや、その、ちがっ、そーいうのじゃなくて!」


「ちょっとルイちゃん! この前陽翔と家帰るとき、手つないでたでしょ!? なんかあったー?」


「んー? ひみつ♥」


ルイのこの笑顔が、また、あざとい。

クラスの女子たちが「ええええ!?」「やばっ!」って騒ぎ出す。


俺の心拍数は常に臨戦態勢。


(くそ、ルイのやつ……完全に“その気”じゃねーか……!)


一方で、俺は……何を言えばいいのか、わからなかった。

ちゃんと“付き合おう”って言ってない。

でも、キスしたし、触れ合ったし、あれってもう……


「ねぇ、陽翔。今日の放課後、また図書室行こっか」


「え、あ、うん」


ルイが耳元で小声で囁いてきた。


「……昨日のつづき、したいな♥」


「っっっ!!!???」


その瞬間、俺の脳内で何かがショートした。


(……まて、マジで……マジで、俺……)


恋ってこんなに体力削るんだっけ——?

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