第8話 「今日は……一緒に寝ても、いい?」

夕方。

夕焼けに染まる空を見上げながら、俺はコンビニ袋をぶら下げて帰宅する途中だった。


そんなとき、背中から聞き覚えのある声が飛んできた。


「はると〜〜!」


「あ、ルイ?」


振り返ると、見慣れた金髪ポニテの美少女——じゃなくて、**俺の幼馴染(♂)**が駆け寄ってくる。


「ねえ、今日って親いないんでしょ? 泊まっていい?」


「は? え? 急に?」


「うん。……ちょっと、ひとりじゃいたくない気分で」


(……この言い方、なんかあるな)


ルイの表情はいつもよりほんの少しだけ寂しげで、

それに気づいた俺は、首を縦に振るしかなかった。


部屋の中、エアコンの音だけがやけに大きく聞こえる。

ふたりでピザをつまみながら、アニメを観て笑って——


「ふふ、はると、ピザのチーズ垂れてる。だらしないなぁ」


「だまれ。てかお前、口の端にソースついてんぞ。……ほら、取ってやる」


「ん……ありがと♥」


(距離……近くね!?)


ルイの唇が俺の指先に触れた気がして、

一瞬、心臓が破裂しかけた。


そして、シャワーを交代で浴びた後。

俺のベッドの上に、ルイが座っている。


パジャマ姿。だけど、パジャマの下が……薄い。ぴったりしてて、ラインが……!


「ねぇ、はると……」


「な、なに?」


「今日は……一緒に寝ても、いい?」


「っ……!」


(待って待って待って、展開がエグいって!!)


俺の心拍数が跳ね上がる。

ベッドの上、ふたりきり。

部屋の明かりは間接照明だけ。

ルイの吐息が、やけに甘くて近い。


「……怖がらないで。何もしない、って言いたいけど……」


ルイは、俺の胸に手を置いて、じっと見つめてくる。


「……私、いま……めっちゃ、したい気分なんだよね」


その声が、甘く囁くようでいて、どこか熱っぽい。


「な、ななななにを言って……!」


「はるとのこと、ずっと……見てるとさ、ムラムラしちゃって……」


ルイの指が、俺の太ももに沿って滑ってくる。


「ねぇ……ちょっとだけ、触ってもいい? お互い様でしょ?」


その瞬間、スラックス越しに、ぴくんと反応してしまった俺の“そこ”に——


「……あ、やっぱり……勃ってる♥」


「ぎゃああああああああ!!」


「ふふ、可愛い♥ ねぇ、ちょっとだけ、ね?」


ルイの手が、スラックスの上から包み込もうとした、その時——


ブウゥゥゥゥゥッッ……


「え、……アラーム?」


スマホのタイマーが鳴った。

俺の“アニメ観る時間”のアラームだ。


「……ふふ、タイミング最悪」


「……ま、まぁ……そ、そろそろ寝ようぜ!!今日はっ!な!もう!!」


「……うん。でもね、はると」


ルイがそっと微笑む。


「私、ちゃんと待ってるから。……“そういうこと”、したくなったら……教えて」

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