第2話
りくは次の日、ぬいぐるみのくまたろうと一緒に、また森へと出かけました。
今日は、リスさんもフクロウの親子も、どこかへ遊びに行っているみたいです。
「きょうは、はじめての道を歩いてみようかな…」
森の中をグルリと見回すと、見たことのない小さな
その獣道を進んでいくと、風がやさしく吹いてきて、木の葉がさらさらと歌いはじめました。くまたろうの耳も、風にふわりとなびいています。
しばらく歩くと、森の奥がふわっと明るくなってきました。
「わあ…!」
りくの目の前に、光る小道が現れました。地面には小さな白い花がぽつぽつと咲いていて、その花がほんのり光っているのです。まるで星が道に降りてきたみたい。
その小道の先で、たぬきの親子が何かを運んでいました。よく見ると、どんぐりや木の実、きれいな葉っぱを並べているみたい。
「こんにちは!」とりくが声を掛けると、たぬきのお母さんがにっこりと笑いました。
「今夜は森の小さなお祭りなのよ。みんなの好きなものとかをここに持ち寄るのよ。…そうだ、キミも良かったらお祭りに来ない?」
「えぇっ!いいの!?じゃあぼくも、ここになにかを持って来たいな…!」
りくは森の中を探しながら、自分の宝物を探しました。きれいな形をした葉っぱ、カサカサと鳴る木の実、そしてふと見つけた、小さなガラス玉のように透き通ったしずく石。
それは、苔の上にそっと置かれていて、朝露を浴びてきらきらと輝いていました。
「ぼくは…これにする!」
夜になって、森の中にはふんわりとした光が灯り、森の中に住む動物たちが少しずつ集まってきました。フクロウ、リス、たぬき、ウサギ、キツネ、そしてりく。
りくが持ってきた“しずく石”は、真ん中の「祭壇」に飾られて、森の光といっしょに、まるで星みたいに光っていました。
風がふわりと吹いて、木々がやさしくざわめきます。
みんなの笑い声と、葉っぱの音と、小さな虫のオーケストラ。
りくはくまたろうをそっと抱きしめながら、心のなかでつぶやきました。
「森って、なんてやさしいんだろう…」
夜のお祭りの後、りくは森の入り口にレジャーシートを敷いて、くまたろうと並んで空を見上げていました。
空には、小さく輝く星がひとつ、またひとつ、やさしく光っています。
「くまたろう、星ってさ…お空の森みたいだね」
すると、どこからかふわりと風が吹いてきて、葉っぱがくるくるとりくの目の前に舞い落ちました。その葉っぱには、小さな白い文字が書かれていました。
「え…?」
りくがその葉っぱを手に取ると、そこにはこう書いてありました。
『しずく石は、森の願いを映す石である』
「森の…願い?」
そのとき、森の奥の方から淡く光る不思議な鳥が飛んできました。まるで月あかりをまとったような姿で、りくの前にふわりと降ります。
「こんばんは、りくくん」
その不思議な鳥はやさしい声でりくに語りかけました。
「きみが持ってきたしずく石には、森のやさしさがうつりました。だから、森もきみにお礼を伝えたいのです」
そう言って、鳥はりくの手に、丸い小さな星の実を乗せました。
「これはね、願いごとをそっと心にしまっておく実。大事にしてごらん。きっと、必要なときに力をくれるよ」
りくはドキドキしながらうなずきました。
鳥が空へ帰っていくと、森はまた静けさを取り戻しました。でも、りくの胸のなかには、ぽかぽかした光が残っていました。
帰り道、くまたろうにそっとささやきます。
「ぼく、またあの鳥さんに会いたいな。でも今は、ちゃんとおやすみの時間だね」
くまたろうも、ポケットのなかで「うん」と言ったような気がしました。
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次の日、りくは「星の実」を握りしめて、森の中へ向かいます。今度は、もっと深いところへ行ってみたい。森が見せてくれる秘密は、まだまだたくさんありそうです。
村の小さな男の子の冒険の話 小阪ノリタカ @noritaka1103
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