第23話「推し探しは推理ゲーム!?駿の名探偵モード発動」

「おばあちゃんが助けられたって?どんな人だったの?」

駿は祖母との電話に身を乗り出していた。


「うーん、地味な子だったけど、すごく丁寧でねぇ……派遣のOLさんって言ってたわよ」


この情報だけで特定するのは至難の業だったが、駿はファンレターとSNSをチェックしはじめる。


「“さおり”って名前、ファンの中に何人いる……?」


マネージャーの三浦が呆れ顔で入ってきた。

「まーた探偵ごっこ? 本業はアイドルよ、春日くん」


「本気です。恩返し、したいんですよ」


三浦はため息をつきつつも、手元のタブレットを差し出す。「じゃあ、協力してやる。これ、ファンリスト。ちゃんとマネージャーにも許可とってるから」


「ありがとうございます!」


駿は嬉々としてリストをチェック。「……“桐谷沙織”……仮候補っと」


***


その頃、沙織は例の青果店にまた立ち寄っていた。


「これ、傷んでないかしら?見分け方が難しくてねぇ」


野菜を手に悩むおばあちゃんを見て、沙織は自然に声をかける。

「もしよかったら、一緒に選びましょうか?」


おばあちゃんの顔がほころぶ。

「まぁ、ありがとう。親切な方ねぇ」


(わ、なんかまた善行ポイント入りそう……)


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レジを終えた沙織がふと横を見ると、またあの占い師がスイカを吟味していた。


「……また現れた……」


「ふふふ、いよいよね、楽しいわ〜」


「え、何が“いよいよ”なんですか?」


「さあ? でもほら、あなたも少しずつ変わってきたじゃない。人と自然に関わるようになったし」


沙織は思わずムッとする。

「それって、勝手に始まった理不尽システムに適応してるだけでは?」


占い師はくるりと回って、軽やかに去っていく。「ま、理不尽も、慣れると悪くないのよ〜ん」


(何なの、あの人……でも、確かに……)


沙織は買い物袋を見つめた。

野菜の袋には、先ほど選んだきゅうりとトマト。


(こういうの、前は面倒で無視してたな)


人に声をかけて、喜ばれて、自分もちょっとだけ嬉しかった。


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***


その夜、駿はノートPCの前で真剣な表情だった。


「“桐谷沙織”…この人、祖母の言ってた雰囲気と合ってるかも」


「髪型といい、雰囲気といい、控えめな感じも一致する」


三浦が後ろから覗き込む。

「決め打ちしすぎるなよ、駿。ファンってだけで期待しすぎると、違った時つらいぞ」


「それでも、知りたいんですよ。助けてくれた人のこと。ちゃんと、ありがとうって言いたい」


***


一方沙織は、コンビニのスイーツコーナーで長考していた。


(あれ……プリン、幸せ感じるからダメかな……)


その手を止めて、ふと鏡に映った自分を見る。


(……でも、少し顔つき変わったかも)


なんだか最近、誰かのために動くことが少しずつ“自分のため”にもなってきているような気がした。


「よし、ゼリーにしよ」


善行ではないけど、欲望もセーブ。地味に健気な夜だった。


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