0、5日目 手すり

「あなた、死ぬことしか考えてないの?」

私は長い沈黙の後、口を開いた

「じゃあ、あなたが助けてくれるの?」

私は涙目になりながらそういった。

そして彼女は口を開いた

「だから、止めて欲しいのって言ったんじゃない。ていうか、私を誰だと思ったの?天使様よ、天使様!滅多に逢えるもんじゃ無いわ」

少しだけ笑ってしまった。


私は、誰かに助けて欲しかったのかもしれない。

だから、そう言った。そう、思った。

虫のいい話というのは分かっている。

簡単に現実から逃げようとした上に、それを助けてもらう、だなんて...


「私は、あなたが必要なの!」


急な言葉にビクッとした。

長く現実を受け止めきれなかった。

でも私は、その言葉を受け止めて、受け止めて、

泣き出してしまった。

この穴に開いた無数の傷をその言葉だけで、一言だけで治して癒してしまった。

確かにこの人は正真正銘、天使だ。


「これで満足?私は助けたわよ、あなたのことを」

私が泣きじゃくっている間にキツめの一言を言われた。

彼女にとっては、こんな一つの命、何億個もの一つでしか無いのだろう。

でも、その一言が私を癒したのだ。



ただ、手すりに突っかかっているだけだったので、落ちるには簡単だった。

足場も狭く、細い。だからここを選んだ。

それに気づくのは、その一言を言われてからだった。


「あっ...!!」

何とか体制を維持していた足が強風で滑ってしまった。


ついに私は死ぬ....のか。

あぁ...!死にたくない。死にたくない!

嫌だ!!!!せっかく助けてもらったのに...!!!


このまま直下すれば、確実に私は死ぬだろう。

私は風に身を任せた。死ぬと思ったから。

と、その一瞬白いものが通った。


天使 だ。


見事に私をキャッチした。

....と天使が口を開いた


「あなた本当にバカね!!!!何で後ろに引かなかったのよ!」

「え...ぁ..ぇぇ..??」

「はぁ...飽き飽きするわ」

「ご..ごめんなさい(?)」


この一言でわかる。彼女はこの何億個もの命を大切に扱っている。

この私の命でさえも。決してぞんざいに扱っていない。

天使だからなのだろうか。



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