物の捉え方に独自の視点があって、作品に引き込まれました。1首目と5首目は、結句が6音で、欠落感の余韻が薫り立ちます。2首目の「無い音たちが在る高原」は、まるで無い音たちのユートピアのよう。また、最後の5首目では、片思いの恋情が切なく詠まれていて、出色でした。全体に、微妙なアシンメトリーの輝きが感じられながら、どこか現状から脱出したいような静かな破壊力が魅力の短歌集です。
もっと見る