chapter20 陸上自衛隊鬼志別演習場。
頭の悪い小学生
広大な敷地の、膝まで雪に埋もれながら、コトブキはポツンと独り立っている。
そこに自衛隊の攻撃ヘリ、Ka52アリガトールが水平に降りて来る。
着地する事なくホバリングのまま、一人の男を降ろすと、何処かへ飛んで行った。
降りてきたのはハタノだった。
膝まで浸かる雪の中、ハタノは首元を開けた薄着のジャケット姿をしていた。
コトブキはその姿を見て、呆れる。
「頭の悪い小学生みたいやぞ」
「俺は熱い、原爆の直撃を受けたあの日から」
そう言って、ハタノは、コトブキに笑う。
「まあ、長年生きていると、お前みたいな破滅的なマレビトに時々会う事があるが、大体は、とっ捕まって二度と生き返らんように、火炙りで灰にされとったわ」
「100万度の高熱の中を俺は生き抜いた。俺は特別なマレビトだ。コトブキ、一緒に来い」
ハタノの言葉の熱量に苦笑いのコトブキ、ふと、ハタノがまわりを見回す。
「後、8人のマレビトは?」
「お前が何者かも分からへんのに、隊員には会わせん。大体お前は誰や?教祖ハタノは60 才くらいのおっさんやぞ」
ハタノは微笑む。
「お前こそ、なぜ500才なんて嘯く、30年前に、関西の地震の時、お前を見つけたのは俺だぞ」
コトブキも微笑む。
「ああ、あの時の、世話になったな」
突然、ハタノが大きな声を出す。
「言わば、お前のマレビトとしての道標を示したのは俺だ!俺達は一心同体だ!」
そこに突然、雪の中から完全武装の8人の兵士が現れ、コトブキとハタノに、カラシキニコフ自動小銃を突きつける。
全員がマレビト隊を示す赤い腕章をしている。
ハタノはまわりを見回す。
コトブキは侮蔑するようなため息を吐いて、ハタノに話し出す。
「お前が逃げれば全員が俺らを撃つ。俺も蜂の巣は覚悟の上や、カラシニコフで蜂の巣なんぞ、生き返るのに相当の時間が掛かる。お前の死亡の確認をして、生き返る前に、灰になるまで燃やしてやるわ。ヒトは根底でマレビトを恐れとる。お前みたいなのが出てくると迷惑なんや」
兵士のひとりがマスクをとる。
「コトブキ、ハタノ!お前達は共謀して国家転覆を企てている。コトブキ!その為にお前は、俺達を騙して、ここまで鍛えた」
コトブキの顔から笑みが消える。
「はあ?なんじゃ、そりゃ?」
「本日、午前ナナマルマル時、横須賀を出港した潜水艦こくりゅうが出港後まもなく海中で行方不明。行方不明になる前の通信で確認出来た事は、陸地を10キロほど離れたところで乗組員が突然爆発、同刻、不明の爆発により艦内損傷、その後、連絡断絶、何者かによる自爆テロと推定、爆発物検査にもかからない不明の物質を不明の隊員が持ち込み、自らの不明爆発により不明の大爆発を誘発し、潜水艦こくりゅうは現在、不明、よってお前らを拘束する。」
「どんだけ不明なんじゃ!そんなんで拘束されてたまるか!」
コトブキはアホくさいと両手を挙げる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます