chapter21 陸上自衛隊鬼志別演習場②

       カラシニコフ自動小銃


「どんだけ不明なんじゃ!そんなんで拘束されてたまるか!」

「政府はマレビトの自爆テロと認定、国内で確認できるマレビトは全て捕縛連行せよとの命令だ」


ハタノが口を挟む。


「お前らは何故拘束されない?」


マレビトの兵士が答える。


「テロ首謀者であるコトブキとハタノを拘束する為に一時任務を任された」


空を見上げるハタノ、チラチラと粉雪が舞う。


「任務が終わればあんたらも拘束されるぞ」

「俺達は拘束されない。自衛隊内には俺達のシンパもいる、信頼もある」


空を見上げままハタノは質問を続ける。


「マレビトはヒトを殺せない。ヒトの兵士を寄こせばいいだろう?」


兵士はカラシニコフを構えたままハタノに話しかける。


「殺せないは、何も出来ないじゃない。死なす事以外は何でもできるという事だ」


コトブキは白々しく関心する。


「ああ、そういう事」

「コトブキを捕縛するには、我々にも覚悟はいる。我々の命は軽い、全員が殺られる前に捕縛する」


わざとらしく、けっ、と言って、話している兵士をハタノが見る。


「安い命とはいえ、随分な使い方だ」

「黙れ!教祖ハタノ、お前は外事警察からマークされている。キルギスの反ソ勢力と国内で接触し、何某かの科学薬品を入手している事を政府は掴んでいる」

「はっ、そこまで情報を提供されていて、なぜ、この任務を受けた?命が軽いと、脳みそも軽いようだ」


「黙れ!」と言った男の頭が突然、吹き飛ぶ。


その後、身体が爆発し、四方5メートルほどの地面が抉れるように消し飛んだ。

そこにいる全員が跳ね飛ぶように地面に伏せる。

雪の中に隠れるハタノの場所が分からず闇雲に兵士達はライフルを撃つ。


「撃つな!撃つな!」


コトブキが叫ぶが、銃声は止まない。

そこにまた爆発が起きる。

鳴り止む銃声、辺りは静まりかえる。

ハタノが叫ぶ。


「俺は、マレビトを意のままに爆発させる事が出来る!マレビトの条件にはまだ分からない事がいくらでもあるぞ!」


雪の中で、身動きが取れない兵士達、ひとりの兵士の側に、雪の中からもぐらのようにかき分けてコトブキが現れる。

兵士はコトブキに慌てて銃口を向けるが、コトブキは同時に兵士のトリガーに、自分の指を挟み、トリガーを押せなくし、弾倉を抜く。


「落ち着け、お前らは政府にもハタノにも騙されとる。マレビトを爆発させるなんて、そんな力を信じるな」


兵士は諦めたように銃口を下げる。


「でも、実際に爆発した」

「よく見たか?爆発は2回起きた。大方、ヘルメットに爆薬がセットされてたんや、その爆発で、人体爆発を誘発させたんや」


驚く兵士は慌てて、自分のヘルメットを脱ぐ、ヘルメットの内側をくまなく見るが、何も無い。


「何もないぞ」

「あれー?」


不思議がるコトブキはふと思いついて兵士の頭に手を伸ばす、兵士の髪の毛にチップのようなものが付いていた。それを兵士の鼻先で見せたあと、チップを捨てる。


「あのチップで爆発を誘発させて、お前らの体内の物質を爆発させとるんや」

「なぜ、わざわざそんなことを?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る