Chapter18 稚内空港①

         テロ        


稚内空港は、国道238号線を挟んでオホーツク海を見ることができる。

左手が稚内市、右手が宗谷岬。


コトブキは鏡子を連れて宗谷岬にいくつもりだった。


東京から一緒に来たモリオは、「なんでまたそんなところに」と、うるさかったが、来てしまったものは仕様がない。

それでも来たはよかったが、なんとなく自分の計画に物足りなさを、コトブキは感じていた。

空港からコトブキがオホーツク海を見ていると、港内放送が突然、コトブキを名指しで呼びだしてきた。それを聞いたコトブキ達はギョッとする。


コトブキがひとりで総合受付まで行き、電話の受話器を取る。

「誰や」

「横内だ」

コトブキはため息を吐く。

横内は陸上自衛隊でコトブキと唯一連絡が取れる一等佐官で、現場指揮のトップだ。それでもコトブキが北海道に来ている事を知っているはずはなかった。

コトブキは苛立ちを隠せない。


「俺に内偵付けるとか、いい根性しとるの、ソ連の秘密警察か」

「そんなものはつけん。内閣府から、連絡が来た。お前に会って欲しいマレビトがいるらしい」

「マレビト?」

「首相直々だ。ハタノという名前らしい。お前の居場所もそのハタノから聞いた」


黙り込むコトブキ、横内は話を続ける。


「その件についてはいい、会う会わないは、お前の都合だ。もうひとつ重要な話がある。海自の潜水艦こくりゅうが、横須賀沖で行方不明になった」

「マレビトが絡んでるんか?」

「察しがいい、艦との最後の通信によると、艦内でクルーが爆発、その後に、大きな爆発が起きている。最初の爆発は次の爆発の誘発と思われる、沖に出て人体爆発となると、我々はどうしてもマレビトを考えてしまう」

「ええよ、そのハタノと会うわ」

「そうか、隊で?個人で?」

「半々やな、場所はこちらの指定したところを用意してくれ、隊員には俺が連絡する。あんな、ひとつ言うわ。テロはな、世の中にアピールする為にするんや、誰がやったかなんてどうでもええねん。今回のアピールポイントはマレビトが爆発する、その事を広く世の中に知らしめる。この一点やな。後、陸自はこの件に手を出すな、大した手柄はないぞ」


コトブキの言葉に言いにくそうに、横内は口を開く。





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