第11話

 翌朝の7時、ようやく目が覚めた彼は、大きく伸びをしていた。


 昨晩に何も食べていなかった彼は、空腹を感じ、とりあえず朝食を摂ることにした。


 トーストとコーヒーを作り、彼は黙々と食べた。


 腹が満たされた彼は、仕事に向かう準備をしていた。



 しかし、彼はふとあることを思い出した。


 彼は玄関からリビングに向かって走りだし、急いで水槽の中をのぞいた。


 水槽の中で、蝶は横たわっていた。


 おかしいと思った彼は、蓋を開け、蝶をつついた。

 しかし、蝶はぴくりとも動かなかった。



 昨晩に砂糖水を与えなかったせいか。それとも水槽から出さなかったせいか。


 彼はあれこれと考えた。しかし、どれも思い当たるような気がしてならなかった。


 彼は頭を抱え、部屋中を歩き回った。

 うん百回と歩き回ったが、彼の混乱は収まることがなかった。


 彼はその場に崩れ落ち、顔を両手で覆った。


 元気にはためいていた蝶。つい数日前まで生きていた、純白の生き物。


 言葉にできぬ悲しみが、彼を打ち砕いた。


 彼は頭を搔き、掻き回した。彼はどうしようもない感情にのまれ、嗚咽した。

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