何度目かの目覚め
「── 君 ── きてよ……。」
(ん……?声……?)
暖かくも寒くもない暗闇の中を漂っていた僕は、不意に聞こえてきた声に思わず声を漏らす。すると、体が浮き上がっていくような感覚と同時に、徐々に視界が明るくなっていく。
「ぅあ……?」
「んぅ……?」
「!ノア君!トウカさん!」
その光の眩しさに僕が声を漏らすと、隣からトウカの声が聞こえてくる。そして、どこか驚いたようなミリアの声と慌ただしい足音が聞こえてくる。
「「ここは……?」」
僕は目を開き、まだ少しぼうっとしながら辺りを見回す。どうやら僕はベッドに寝かされていたらしく、隣のベッドでは僕と同じようにトウカが辺りを見回している。
「── 早く!」
すると、そんな声と共にミリアが部屋に入ってくる。
「ノア様!トウカ様!」
「ノア!トウカ!」
そして、そんな彼女に続いて、レオンと父さん、そして母さんがは部屋に駆け込んでくる。
「あれ……?母さん……?」
「どうしてここに……?」
そんな姿を見、僕たちはそう疑問の声を漏らす。
── 母さんって……確か分家のあるハクメイで療養してたんじゃなかったっけ……?ハクメイからここまで来ようと思ったら、早馬を走らせても一週間はかかるはずだけど……。
「……そのことも含めて、少し今の状況を説明しようか。」
そんな僕たちの様子に、父さんは真剣な声でそう言うのだった。
「── ノア君は、森でのことをどこまで覚えてるの?」
「えっと……確か白い雷に当たって……。……そこまでかな。」
「トウカさんは?」
「その後、お兄ちゃんを回復したところまでですね。」
数分後。部屋に人数分の椅子が用意された後、僕とトウカはミリアにそう質問される。
「……それなら、雷が当たった後から話すね。……あの後、ノア君が勝手に動き始めて、どこかに黒い斬撃を飛ばしたの。コハク君が言うにはスキルが動かしてたみたいだけど、心当たりはある?」
「心当たりというか……答えを知ってるよ。僕のスキルで間違いないね。」
確実にナビィだね。うん。……後で何をやったのか聞いておかないと……。
「ならよかった。……それで、斬撃を飛ばした後にお兄ちゃんが倒れて、コハク君と一緒にいたアカネさんがトウカさんの身体を借りて、ノア君を回復したところでトウカさんも倒れちゃって……。とりあえずノア君とトウカさん、あとはまだ息があった黒ローブを何人か担いで、急いでここまで帰ってきたの。」
「装置はどうなったんですか?」
「あれは次の日に確認したら魔石が8割がた溶けちゃってて、ほとんど機能しなくなってたよ。一応壊してこっちに持ってきたから、万が一もないと思うし。」
「そうですか。それなら安心ですね。」
「うん。……それで?その後はどうなったの?」
「その後は、エルドさんたちに手伝ってもらいながらあそこで何をやろうとしてたのか聞き出そうとしてみたりあの装置の詳細を調べたりいろいろしてた感じかな。」
「へー……。」
僕はそう答えつつ、さっきから薄々気になっていたことをミリアに問いかける。
「ところでさ……。……僕たちって、どのくらい寝てたの……?」
僕がそう聞くと、ミリアは少し答えづらそうな顔をした後、こう口にする。
「えぇっとぉ……。……落ち着いて聞いてね……?」
ミリアはそう前置きすると、
「ノア君とトウカさんは……一か月くらい、寝てたんだよ。」
と、静かに言った。
「── まあ、そのくらいだよね。」
「だね。
「……え?」
そんな僕たちの言葉に、ミリアは気の抜けたような声を漏らす。
「えーっと……まだ起きたばっかで頭が回ってない感じ……?」
「いや?既にはっきりしてるよ?」
「なら尚更何で!?一ヶ月だよ!?普通もっと驚くんじゃ……。」
「あー……実は、寝てる間も意識自体ははっきりしてたんだよ。何なら、トウカとも話してたし。」
「……え?それ、本当……?」
「うん。お兄ちゃんの言う通りだよ。何も無い真っ白な空間でだけどね。」
そう僕たちが言ったところで、部屋の扉が開く。
「ノアっ!」
「コハク!?……どうしてここに?」
「ノアの目が覚めたって聞いたから。それより、さっき聞こえてきたんだけど……。……寝てる間、白い空間で話してたって本当?」
「うん。そうだけど……。」
僕の問いかけへの答えの答えもそこそこに、部屋に駆け込んできたコハクがそう聞いてくる。それに僕が答えると、コハクは難しい顔をして、
「そうなると……少し大変なことになったかもしれない。」
と、静かに言うのだった。
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宵待月に桜は踊る 葉隠真桜 @19014768
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