脱出と再会②

ザンッ!


──ふう……。危なかった……。


反応があった場所に急いで向かっていた僕は、こんなところにいるはずのないミノタウロスと、それに襲われている女の子を見つけた。今にも斧で斬り殺そうとしてたから、とりあえず腕は斬り飛ばしておいたけど、多分すぐ再生されるな。


……これでよし、と。


そうして僕は彼女の方に振り向くと、


「あの……、大丈夫でしたか?」


と問いかける。


「う、うん……。」


と答える彼女。どこも怪我はしてなさそうだ。そう僕がほっと胸を撫で下ろしていると、後ろでミノタウロスが斧を振りかぶっているのを感じる。


「あ、危ない!」


と彼女が言うが、僕は動かない。


「大丈夫。だって、もう斬ったから。」

「え?」


その瞬間、ミノタウロスの上半身がずり落ちる。ミノタウロスは何が起こったのかわからないような顔をして、絶命した。

呆気に取られる彼女に、僕はこう聞く。


「ここで何があったのか、教えてもらっていいかな?」

「う、うん。私、Eランクパーティーの昇格試験の監督をしてたんだけど、いきなりあれが現れて……。多分異常出現だと思う。あっ、名前まだいってなかったね。私はミリア=グリーツ。この王都で、Aランクの冒険者として活動してる。」


その名前を聞いて、僕は少なくない衝撃を受けた。


「ほ、本当に?本当にミリアなの?」


そう僕が聞くと、


「う、うん……。……もしかして、ノア、君……?」

僕は頷く。するとミリアは目に大粒の涙を浮かべ、僕に抱きついてくる。


「よかった……!生きててくれたんだね……!」


そう言う彼女に、僕はふと浮かんだ疑問を聞く。


「もしかして僕、死んだと思われてた?」

「うん……。」

「一応聞いておくと、今日の日付って?」

「えーっとね、確か1月の3日だったかな?」


僕があの穴に落ちた日から、3ヶ月が、経っていた。


ダンジョンの上に向かいつつ、僕はミリアから今の状況を教えてもらっていた。どうやらあいつらが僕を落とした後、僕が戦闘中に穴に落ちたっていう虚偽の説明をしたらしい。で、今は彼女に本当のことを説明してるところなんだけど……。


「ふーん……。あいつら、ノア君にそんなことを……。」

「ちょっと待ってね!?一体その剣で何をしようとしてるのかな!?」

「あいつらを私刑リンチ……ゲフンゲフン、ちょーっと指導をしようかなって。」

「いやダメだよ!?私刑って聞こえたけど、それギルドの法で禁止されてるよね!?後指導だとしても、普通剣はいらないと思うんだけど!?」

「むー……。ノア君はあいつらに対して何も思わないの?」

「確かに何も思わないわけではないけど……。あいつらは王国の法律で裁かれるべきだし、そこに僕たちが個人的に何かをするなんてこと、できないしするべきじゃないよ。」

「ノア君がそういうなら……。でも、ノア君って昔からそうだよね。自分に何か悪いことをしてきた人がいても、絶対に手を出さないというか……。一部の例外はあったけど。」

「ははは……。まあ、僕みたいなのがそんなことしても、誰も得はしないしね。……まぁ、一部例外はあるけど……。」


そんなことを話していると、目の前に3体のゴブリンが現れる。

即座に剣を抜こうとするミリアを手で制し、僕は腕を振るう。それだけでゴブリンは胴体が切断され、絶命する。


「さっきも思ったけど、どうやって斬ってるの?」


と彼女が聞いてくる。


「それは、これを使ってるんだ。」


僕はそういって、糸を見せる。


「これって前から使ってたっていう糸?でも、足止め程度しかできなかったって話じゃ……。」

「実は……。あの時でもゴブリンくらいなら一撃で斬り離すことはできたんだ。……まあ、それをやるとライアスがキレるからやらなかったんだけど……。それが地下での特訓で、ここまで切れ味が良くなったってわけ。」

「へーっ、そうだったんだ!でも、それって大変じゃなかった?」

「正直地獄だった。だって、あいつ弱かったし。他の2人も何もしなかったから、僕がほとんど全てをやってたんだよね。」


僕がそう言うと、彼女はこんなことを聞いてくる。


「ちなみに、どんなことをやってたの?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る