第9話 解放と新たな屈辱
ビルの前の夜風は冷たく、5人の体を容赦なく震わせていた。
「彩花…まだ…カメラ、映してる…?」
美咲が震える声で囁き、マスコミのライトをちらりと見る。
赤と青のサイレンが夜を切り裂き、警察車両が遠くで光る。
「美咲…今は…気にしないで。一緒にいるよ。」
彩花は美咲の手を握るが、彼女の心は羞恥で重い。
「全国に…全部…何度も見られたなんて…」
玲奈が腕で顔を覆い、涙をこぼす。
「玲奈、顔を上げて。私たち、生きてるよ。」
結衣が玲奈の肩を抱き、声を絞り出す。
「…こんな屈辱…まだ続くの…?」
真央が低く呟き、冷たい地面を睨む。
テロリストは5人を銃で囲み、警察を挑発し続けていた。
「要求を飲め! さもないと、こいつらは終わりだ!」
リーダー格が怒鳴り、彩花の肩を強く掴む。
「やめて…お願い…もう…!」
彩花が叫ぶが、男は彼女を突き飛ばす。
「黙れ! お前らの命は俺たちが握ってる!」
銃を持った男が笑い、5人を見下ろす。
「彩花…怖い…もう…何も…」
美咲が泣き声を漏らし、彩花の腕にしがみつく。
「美咲、大丈夫。一緒だよ。耐えよう。」
彩花は答えるが、彼女の声も震えている。
突然、ビルの周囲が騒がしくなった。
警察車両が動き、拡声器の声が鋭く響く。
「こちらは警視庁! 直ちに武器を捨て投降しろ!」
その声に、テロリストの動きが一瞬止まる。
「なんだ!? 動くな!」
リーダー格が叫び、銃を5人に向ける。
だが、その瞬間、ビルの裏口から黒い影が飛び出した。
「警察だ! 武器を捨てろ!」
黒ずくめの特殊部隊が一斉に突入し、銃声を上げる。
バン! バン!
テロリストが慌てて応戦するが、訓練された動きに圧倒される。
「彩花! 下がって!」
結衣が叫び、5人を地面に押し倒す。
「結衣…! 何!?」
玲奈が悲鳴を上げ、彩花の腕にしがみつく。
銃声と怒鳴り声が響き合い、煙がビル前に広がる。
「美咲、頭下げて!」
真央が美咲を庇い、地面に伏せる。
「真央ちゃん…怖い…!」
美咲が泣き声を漏らし、真央にしがみつく。
「動くな! 投降しろ!」
特殊部隊の声が響き、テロリストの一人が地面に倒れる。
リーダー格が彩花を掴もうとするが、隊員に組み伏せられる。
「くそっ…!」
彼の銃が地面に落ち、金属音が響く。
「彩花! 大丈夫!?」
結衣が彩花の手を握り、顔を覗き込む。
「う…うん…結衣…!」
彩花は震えながら頷く。
数分後、銃声が止み、静けさが戻った。
「確保完了! 人質は無事だ!」
特殊部隊の隊員が叫び、5人に近づく。
「君たち、大丈夫か!? 怪我はない!?」
隊員の一人が彩花に声をかけ、肩を叩く。
「は…はい…私たち…」
彩花は言葉を詰まらせ、仲間を見渡す。
「彩花…終わった…? 本当に…?」
美咲が震える声で尋ね、彩花の手を握る。
「うん…終わったよ。美咲…生きてるよ。」
彩花は美咲を抱きしめ、涙をこぼす。
安堵が5人の体を包んだ。
(終わった…本当に…助かった…)
彩花の心臓がようやく落ち着き、力が抜ける。
だが、その瞬間、下腹部に熱い波が押し寄せる。
(あ…! ダメ…!)
彼女は力を入れるが、安堵が全てを緩ませる。
じわりと温かい感覚が足元を伝い、地面に水たまりが広がる。
「う…っ…!」
彩花は顔を赤らめ、地面を睨む。
「彩花…!?」
玲奈が驚いた声で囁き、彩花の手を握る。
だが、玲奈自身も安堵に体が震える。
(やだ…私も…!)
抑えきれぬ熱が足元を濡らし、地面に水音が響く。
「や…ごめん…!」
玲奈は両手で顔を覆い、涙をこぼす。
美咲の体も震えていた。
「美咲…! 大丈夫だよ!」
結衣が美咲の肩を掴むが、彼女の目も潤む。
「結衣…私…また…!」
美咲の声は震え、熱い波が足元に広がる。
「う…恥ずかしい…!」
美咲は泣き声を上げ、結衣にしがみつく。
結衣の心も安堵で緩んでいた。
(終わった…みんな…無事で…)
だが、彼女の体が勝手に反応する。
(ダメ…!)
下腹部から熱が溢れ、地面に水音が響く。
「く…っ…!」
結衣は唇を噛み、顔を背ける。
真央は無表情を保とうとしていた。
(やっと…終わった…)
だが、安堵が彼女の体を支配する。
抑えきれぬ熱が足元を濡らし、地面に水たまりを作る。
「…っ…」
真央は視線を逸らし、唇を噛む。
マスコミのカメラは、その瞬間を冷酷に捉えていた。
「スターリットの5人…解放された直後の様子です…」
レポーターの声が遠くで響き、ライトが5人を照らす。
「うそ…映ってる…!?」
美咲が悲鳴のような声を上げ、顔を覆う。
「美咲…! 気にしないで…!」
彩花が美咲の手を握るが、彼女の心も締め付けられる。
特殊部隊の隊員が5人に近づいた。
「君たち、すぐに安全な場所へ! こちらへ!」
隊員が叫び、5人をビルの外へ導く。
だが、5人は服を奪われたままだった。
「待って…服…! 服を…!」
玲奈が震える声で訴えるが、隊員は急ぐ。
「今は命が優先だ! 早く!」
隊員の声に、5人は渋々従う。
ビルの外に出ると、冷たい風が全身を刺した。
マスコミのカメラが一斉に5人を捉え、フラッシュが光る。
「スターリット、解放! しかし…この状態で…」
レポーターの声が続き、放送が全国に流れる。
「やめて…映さないで…!」
美咲が叫び、腕で体を隠す。
「全国に…また…全部…」
彩花が唇を噛み、涙をこぼす。
「こんな…恥ずかしい…もう…終わりたい…」
玲奈が膝を抱え、地面にしゃがみ込む。
彩花の心は絶望で砕けそうだった。
(助かったのに…こんな姿…全部見られて…)
カメラの光が目を焼き、ファンの声が頭をよぎる。
(「彩花ちゃん、最高!」…もう…戻れない…)
彼女の胸が締め付けられ、涙が止まらない。
「彩花…ごめん…私が…もっと…」
玲奈が泣きながら彩花の手を握る。
「玲奈、いいよ…誰も悪くない…」
彩花は涙を拭い、仲間を見渡す。
「美咲、大丈夫だよ。そばにいるから。」
結衣が美咲を抱きしめ、声を絞り出す。
「う…結衣…ありがとう…」
美咲は頷き、嗚咽を漏らす。
「真央…私たち…まだ諦めないよね?」
彩花が真央に目をやり、震える声で尋ねる。
「…ああ。負けるわけない。」
真央は短く答え、仲間を見渡す。
「ファン…きっと待っててくれるよ。帰ろう。」
結衣が玲奈の手を握り、微笑む。
「うん…結衣…ありがとう…」
玲奈は頷き、涙を拭う。
警察車両が近づき、隊員が毛布を5人に手渡した。
「これで体を隠せ。救急車で病院へ運ぶぞ。」
隊員の声に、5人は毛布を握りしめる。
「彩花…やっと…少し…安心できる…?」
美咲が震える声で尋ね、彩花の手を握る。
「うん…美咲。一緒に帰るよ。」
彩花は微笑み、仲間を見渡す。
マスコミのカメラは遠ざかるが、放送の傷跡は残る。
ビルの時計は夜11時半を指していた。
恐怖の夜は終わったが、屈辱の余波は続く。
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