第二話 一目惚れ

ハデスは、ある場所に向かって歩みを進めた。歩いていくとやがて一筋の光が見えてきた。それは大地の裂け目。冥界で唯一、地上の光が差す場所である。ここから見える地上の風景を見ることがハデスの数少ない楽しみの一つだった。


「やはり、地上の風景は良いものだな。」


しばらく地上の風景を眺めていると、誰かが近づいてくる足音が聞こえた。そして、裂け目のすぐ近くで止まった。しばらくすると、一人の少女の姿が見えた。

髪はきれいな金色で、長く一部が跳ねていて、ピンクの花の髪飾りをカチューシャのように着けていた。目は桃を思わせるような薄いピンクで、顔は小柄ながらも可愛らしい顔立ちをしていた。白いキトンを纏っているその身体は華奢ながらもバランスが取れた体系をしていた。

その少女を見た瞬間、ハデスは今まで味わったことの無い胸の高鳴りを覚えた。


やがて、空が朱色に染まって来る頃、少女はどこかに去って行った。

それと同時に、ハッとするハデス。気づけば、長いこと少女のことを眺めていたようだった。


裁判所へと戻る最中、ハデスは自身が今まで感じたことの無かった胸の高鳴りに困惑していた。

「なんだ...。この感覚は...。」


それが恋心だと気が付くのは、もう少し先の話である。

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