昇級
「本当に昇級できるんかい?」
「まぁな。トマウさんが推薦してくれるらしいし本当だと思うがな。」
「でも五級昇級って貴族と他二名の推薦がないといけないんじゃないのか?」
六級から五級に上がる場合、最低でも貴族一名と商人一名とギルド職員一名の推薦が必要だ。だからこそ六級までの間にどれだけ信頼を勝ち取るかでギルドでの立場も変わる。
「おいおい、目の前にいるじゃないか。」
「ん?………あぁ…そういえばそっか。」
「それは酷くないか?」
「いやぁ?……でもあと一人は?」
「いるだろ?一人、モズ商会だよ。」
あー……ライトローの家か。
「息子が世話になったからって言って推薦してたぜ。」
「マジか?言うほどしてない気がするんだが?」
「なんかライトローが手紙で書き記してたらしいぞ?憧れだぁとかなんとか。」
「お、おぁ?そうか……」
ヤバイな、ちょっと恥ずかしい。暫くライトローの顔を直視出来ないかも。
「なに照れてんだよ。お前にもそういう可愛い所があるんだな?」
「やめろ!さっさと昇級の手続きしろや!」
「おぉ、怖い怖い。」
てめっ!ニヤニヤしやがって!
「よし、手続きは終わった。じゃあ預かるぞ?」
私はギルド登録の時に渡される身分証明書の代わりとなる金属プレート、名称ギルドプレートを渡す。
この金属は階級によって色が変わる画鋲と同じく、触ると金属なのだが画鋲の色と同じ色になっている。着色方法は知らん。なんかの魔法としか言えない。
つまり今の私のプレートは赤い板に見えるが、触ると金属であることが分かるみたいな?説明下手でごめんよ。
「ポイントはどうする?」
来たか……どうするべきか………………………
「……よし、決めた。障壁魔法だ。」
「えぇ……他の魔法の練度を上げないのかよ………」
「良いだろ?別に。障壁魔法だ。」
本来なら光魔法を中心とした構成が推奨されてるが、私は器用貧乏の方が性に合ってる気がした。
何故って?勘だよ勘。
「分かったよ。……でも一応心配してるってことは理解してくれよ?お前がいなくなると寂しくなるからさ。」
「なんだよ急に……そんな臆面もなく。」
「なんだよ、また照れてんのかよ。」
「うるさいぞ!終わったならプレート返せ!」
「はいよ。」
返されたプレートを少し荒っぽく受け取り、ギルドから出ようとした。
「確認しないのか?」
「必要ない。信頼してる。」
私はそれだけ返すと一直線で家に走った。
「……なんだよ、人のこと言えないじゃないか。」
少し含羞むドルネスだった。
「えっと……ドルネス…さん。」
「どうしたんだ?ライトロー。」
「ひっ!あ、いえ!なんでも!えっと…………」
「で?」
「えっと…俺ってコルテさんになんかやっちまいましたか?」
「何でだ?」
「いや、挨拶しても返してくれないんすよ!ゴルトンには返してるのに!」
「えー?……………………あぁ。」
「え!?何か知ってるんですか!?」
「さぁ?知らないね。」
「あっ、ちょっと教えてくださいよ!」
「………なら六級に昇級出来たら教えてやるよ。」
「マジっすか!?うっ………いや、分かりました!やってやりますよ!」
「頑張れよぉ~。」
━数日後のギルド内でのとある会話━
「うーん…………」
「どうしたんで?コルテさん。」
「いやぁ、三年位赤いプレートだったからさ、青いプレートに慣れなくてよ。」
「まぁまぁそんなのすぐに慣れますよ。」
「………だな。」
前回の熊(クライムヴァイオレットライン)を討伐した日から五日程経過した。無理な動きをたくさんしたせいで身体が動かなくなっていたが、昨日には大分よくなり、ギルドで討伐報酬を貰った。珍しいこともあってかクライムベア十体分だった。………もうちょい高くても良いのでは?と思ったが、戦ったのが私だけなため、どれほど強いかの精査がしきれずこのくらいとなったようだ。
関係ないけどクライムヴァイオレットラインって熊じゃなくなってるじゃん。と、思った今日この頃。
現在ワズと一緒に依頼メンバー待ちである。ワズが三人設定にしたため揃うまで待機だ。
「そういやワズって最近ちょくちょくナラクと一緒にいるよな?どうなんだ?」
「あぁ、ナラクさ……ナラクは…」
「何で言い直した?」
「いやぁ、同じ階級でも年期が違うって言って、本人の前でタメ口使うと嫌な顔されるんですよね。僕はこんなに素敵な笑顔なのに。」
うわ、ダル。………二重で。
「そんなの無視しろって。」
「でも罠に関しては一番詳しいじゃないですか、あの人。だから教えて貰ってる時は敬語にしてます。そして僕はさらに完璧へと近づくのです。」
「そ、ワズが納得してるなら良いんじゃない?」
「です。」
そんな世間話を話していると…
「二番テーブルは………あ、コルテさん!とぉ……」
「アンケイドじゃーん。ちゃんと紙出した?」
「ちょっとコルテさん、新人扱いはもう止めてください。僕はもう七級ですよ?」
「え!」
「あぁ、すみません。初めまして僕はアンケイドです。」
「あっおぉ、僕はワズだ。」
「お、初対面か。じゃあ挨拶もしたところでお互いの戦闘スタイルを話すか。二人とも私のはなんとなく知ってるだろうしパスな。」
別にめんどかったわけじゃないからねぇー。
「はい、僕はショートソードによる戦闘と光魔法による応用が基本です。」
「なるほど。僕は見ての通りこの煌めく大盾で攻撃を受けきることです。魔法も障壁魔法だけです。」
「うんうん、それじゃあ行くか。」
「「はい。」」
今回の依頼は樵夫の護衛だ。元々樵夫はあまりいなかった。何故ならこの世界の神話において現在開拓されている土地が呪われていて、神様が森林を創造し、その地を封印したと言われていたからだ。他の国では分からないが、この国では開拓地以外の森林が無く、ちょっとした雑木林を伐採することしか出来ず、出稼ぎに行っている国民ばかりだった。しかし、その神話も風化してしまい、国で開拓が事業として確立したことにより樵夫が急激に増えたのだ。けれど、それにより農家や漁師等の他職種の人材が樵夫に流れたせいで食料自給率がこの世界全体で減った。だからこそ、この国では農業を推奨し国が支援することで何とか保とうとしている。
まぁ…意味があるかと言われると微妙だがね。
「今日はよろしく頼む、俺はロッケンだ。」
とりあえず依頼を出したロッケンに挨拶をした。ロッケンは同業者と連携して仕事をしており今回はロッケン含めた七人の護衛だ。
仕事の内容的には三人が伐採、三人が伐採された材木の運搬、ロッケンが運搬された材木の総括を担当している。
どうやらロッケンは元ギルドメンバーで戦闘可能な為、私達三人は伐採担当の三人に一人ずつ護衛の担当となった。ロッケンが運搬係と運搬された材木の見張り等、かなり忙しいのではと思ったが問題ないと言われた。
「よろしく。」
「おぉ?こんな美人が一緒にいてくれるとか最高かよ!俺はケルガー、ロッケンは俺の親父だ。よろしくな。」
「そうか、ロッケンはかなり腕が立つと見たが……」
「やっぱり分かる人には分かるのか!そうだ!俺も憧れてはいるけど同じようにはいかなくてさ!」
遮られて捲し立てられた。よほど尊敬しているのだろう。
「……そろそろ作業しようぜ?」
「あ!そうだな!悪い。
それじゃ頼むぜぇー。」
ザッ!ザッ!ザッ!ザッ!
伐採の音が森に響く。
かなりのお喋りだと思ったが仕事は真面目にやるようで安心した。
結論で言おう。……なんもなかった。
六時間立ってるだけだった。それだけで全員に金貨五枚は高すぎると思ったが、不測の事態は避けたいから構わないとロッケンに押し切られてしまった。
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