6,同期の紫石英

「そうねぇ、じゃあ見てみる?」


 唐突に。紫澱はそんな言葉を口にした。

 思わぬ提案に反応するため、望美は口に運んだばかりのチョコケーキを早々に呑み込まされる。


「え、見れるの?」

「わからないわ。けど私の能力チカラを使えば可能性はありそうだと思わない?」

「もしかして、それ?」

「そう、これの応用」


 二人はそれぞれ疑問と、回答の意味でアメジスト色に煌めくパソコンを指さした。

 そのまま紫澱は手慣れた操作でデータを保存し、USBを手に取る。するとその瞬間、まるで結晶が砕けるようにパソコンは粉々に消えていってしまった。


「アンタのその……『同期の紫石英』だっけ? それは前アンタから物体と物体を概念から接続する能力って聞いた気がするけど。さっきやってたみたいなUSB内のデータから大元のPCを生成したりとか、そういう使い方以外にもあるの?」

「最近じゃ正攻法の方が安定するから使ってないだけで、データの同期もできるわよ。その原理でUSB側で弄ってもPC本体に反映されてるの。何なら私と貴女の携帯で試してみる?」

「遠慮しておくわ。いくら使用頻度が低いとはいえ、バグって買い直しにでもなったら困るもの」


 知り合いとの連絡以外でほとんど携帯を起動しない望美だが、それでも連絡手段が失われては困る。

 危ない橋はリスクとリターンを天秤にかけてから渡る、と彼女は決めている。


「それで、その能力でどうやって私に幽霊を見せるってのよ」

「貴女と私の眼を同期するのよ。USBをPCにできるなら、貴女の目も浄眼にできるかもしれないわ」

「……なるほど。実質的に新しい部位を作るってわけね。成功するかはともかく、一旦成功した場合を考えると……うん、死んだり重い後遺症が残る心配はなさそうかな」

「じゃあ試してみるってことでいいのね?」

「えぇもちろん。今すぐ試しましょう」


 彼女はいつも通り、リスクとリターンを天秤にかけた。

 天秤はどんなに僅差であろうが、重い方に傾くのである。

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