1.内藤 文孝

 俺、内藤ないとう 文孝ふみたかは登録者10万人のゲーム配信者だった。得意ジャンルはソウルライク系の作品、所謂『死にゲー』と呼ばれるものだ。


「おはこん〜〜今日は久々に『ダンジョン・オブ・ソーサリー』をね、防具ナシ、術式ナシ、ロングソードで死んだら即終了配信をやっちゃうよぉ」


『ダンジョン・オブ・ソーサリー』とはインディーズながらプレイヤー数が10万人を誇るソウルライク3Dアクションだ。


 このゲームは一度死亡するとデッドエンドになり、初めからやり直しとなる鬼畜仕様。だから、かなりの数の人が挫折するが、俺は折れなかった。


 死ぬ度に敵の攻撃方法と分析を行い、何度も何度も再トライを行った。その甲斐あって、4種のマルチエンディングを全て確認し、ほとんどの装備品を手に入れた。サブクエストも全部攻略した。


 いつの間にか俺はこのゲームについて、他の追随を許さないぐらい詳しくなり、界隈で【死にゲーの神】と評されるまでになった。


 そして、この日、俺はライヴ配信で『ダンジョン・オブ・ソーサリー』の縛りプレイを配信していた。


 もう何度も周回プレイをしているため、7時間ちょっとで一度も死なずラスボス前に辿り着いた。


「そういえばコメントで教えてもらったけど、大型アップデートがあったんだっけ。特に新シナリオとかなかったね?それとも何か条件があるのか?」


「次はシナリオ探索をしようかな?もし、情報があれば教えて……お!ついにラスボスがいる扉の前に到着しました!」


 俺はこの時に違和感に感じるべきだった。


 ▼最期の旅の準備はいいか。


 いつもは黒字に白いフォントだったのに、血の様に真っ赤なフォントになっていた。だが、俺は扉を開けることを選択した。


 心臓の鼓動が激しくなり、耐え難い痛みで咄嗟に胸を押さえる。胸の骨が爆発するような衝撃が絶え間なく身体全体に響き、俺は意識をそのまま失った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る