第2話 ヘッドラインに右往左往
勝ったり負けたりを繰り返しながら、自分の型を模索する。
――だがこれだと思うトレードスタイルが確立できない。
いや、確立する気がないのかもしれない。
なぜなら、中途半端に勝つからだ!
このままでは生き残れないと分かっているのに、要所要所で勝ってしまう。だから、急がなくてもいいかと思ってしまう。
――そう、俺には危機感が足りていない。
普段はネガティブ思考なのに、変なところで楽観的になってしまう。俺の悪いところだ……。
とは言え、この状態が続くとさすがにジリ貧すぎる。
そこで、チャートパターンや基礎知識を勉強しなおす。
ダウ理論や移動平均線の向きを意識し、トレードするようにした。
しかし、思ったように上手く行かない。
――なぜなら、トランプの呟きによってマーケットが荒らされるからだ……。
これにより、テクニカル分析が全く効かない。
いつ呟かれてもいいように、利確を細かくするように対策をした。
要は、スキャルピングメインのトレードだ!
だが、これも上手く行かない。
理由は、損切り幅を狭くしているからだ。
5〜10銭で切るので、ボラが激しいとすぐに損切りにかかる。
そして、俺のポジを刈ったら建値に戻る……。
みるみる資金が減っていく――。
(さすがに、まずいな。やっぱり、デイトレに戻すか?)
デイトレにしたとしても、またトランプの呟きによってやられるかもしれない。
この状況でも勝っている人は沢山いる。つまり、俺がダメすぎるんだ。
気合を入れなおし、トレードをする。
まぁ、気合を入れなおしたところで勝てるわけがない。
なので、相変わらずの鳴かず飛ばずの結果が続く。
――そんな時、トランプ関税報道が入る!
これを受け、急速な円高に!!
トランプ関税報道から数日後、今度は中国が報復関税報道!!!
さらに、円高へ。
そして俺はというと、モロに被弾し……爆損。
「も゙う止めてくれよォォォ。マジでお金が無くなるよォォォ」
俺は怒り叫ぶが、失った金は戻ってこない。
(気持ちを切り替えて、ちょっとずつ取り戻すしかない)
俺は自分にそう言い聞かせ、トレード再開する。
――しかし数日後、それは起こった!
何が起こったのかというと、関税の発効を『90日間延期する』という報道だ!
この報道を受け、円高から急激な円安へ!!!
――だが、問題はここからだ。
ホワイトハウスが、『90日間延期する』とは言っていない。フェイクニュースだと否定したのだ!
これを受け、今度は円高へ!!!
「マジでいい加減にしてくれェェェ」
順張りしようが逆張りしようが、何をやってもボコボコにやられる……。もう、どうしたらいいのか分からん。
だが、このトランプ劇場ともいえる相場で勝っている人もいる。
つまり、俺が下手糞なだけだ。
(無駄なトレードを減らして、入る場所を厳選しよう)
突発的な要人発言にビビってしまった俺は、2銭前後を狙うトレードだけをするようになった。
大勝ちは狙えないが、大負けもしない。俺にはこの小心者のトレードスタイルが合っているかもしれん。
このやり方に完全にシフトしてからは調子が良く、ちょっとずつだが資金が回復していった。
(よしよし、良い感じだ! この調子で原資回復だぁ)
微益だが、連日連勝していた俺は調子に乗っていた。
上手く行っている時ほど慎重にという言葉があるように、こういう時に人はやらかす。
この言葉通り、俺は派手にやらかしてしまう。
5月12日(月)の16時に、アメリカのベッセント財務長官が『双方が関税を115%引き下げることで合意した』と発表した!
この報道を受け、ドル円は急騰!!!
で、この時の俺はというと……窓埋め狙いのショートをポジっていた。
そのため、一瞬で50銭の損切りを食らい爆損。
これにムカついた俺は、怒りの逆張りで勝負をする。しかも、フルレバで……。
「あ゙ァァア、も゙ォォォ」
上昇の流れが強く、一瞬で刈られてしまった。
さらに俺は怒り狂い、再び怒りの逆張りショート。
「よぉぉぉし! いっけぇぇぇ!!!」
この逆張りは上手く行き、15銭ほど落ちた。
「ここでいったん利確か?」
利確するか迷ったが、これまでの負けを一発で取り戻したい。そう思った俺は、半値戻しまで引っ張ることを決意。
だが、これが裏目に出た――。
「何で俺が引っ張ると、伸びねぇぇぇんだよ。イラつくなァァァア、も゙ォ」
建値まで戻ってくると、そのまま上昇していった。
その結果、またもや損切り。
血管がブチギレそうなくらい逆上した俺は、再度逆張りショート。
「落ちろ、落ちろッ」
三度目の正直も失敗に終わり、損切り。
もうどうにでもなれと思った俺は、懲りずに逆張りショート。
「また反転するかもしれんから、ここいらで利確しとくか!」
今回は引っ張らず、12銭で利確!
その後は順張りと逆張りの両方を繰り返し、12万円ほど取り返した。が、感情任せトレードの代償は大きかった。
この日の負けは……22万円。
次の日目を覚ました俺は、激しく後悔した。
(何回……いや、何百回同じことを繰り返すんだ俺は)
何回目の近いか分からないが、今日からはマイルールを守ってトレードすることを心に誓った。
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