ユノとの対談

あれから2日後、俺達は今ユノの家の前にいた。

曰く春さんの事は俺に一人ということらしい。

これまでの人生をほぼ一人で生きてきた俺に取っては務まるかは怪しいができるだけ引き止める事ができるよう善処しよう。


「あ、そうだもしもの時のために連絡できるようスマホの連絡先教えて」

「俺スマホ持ってないんだが」


全員が豆鉄砲をくらった鳩のような顔をする。

いや普通に考えたらホームレスが持ってるはず無いだろ。そもそも持っていたとしても全ての記録が消えてしまうためただの邪魔なガラクタにしかならない。


「なら僕のを貸して挙げるよ」

「いいのかルシア」

「別にいいよ、ただ勝手にいかがわしいサイトとか写真フォルダは見ないでね」

「わかってるよ」


基本電話以外で触ることなんて無いだろうしな。


「そうだ、このスマホって録音機能はあるか」

「あるけどどうしたの」

「いや、春さんと話している時録音をとっておいたほうが良いと思ってな」

「確かに、じゃあちょっと貸して」


ルシアにスマホを返すと彼女は素早く画面を操作し俺に再び渡してきた。


「はい、これもう録音されてるから」

「服の内ポケットにでもしまっておく」


スマホをズボンのポケットにしまうとノアがインターホンを押した。


「はーい。少し待っててくださいね」


聞こえて来たのは予想通り春さん声だった。

ここからは予定通り計画を進めるだけなのでさほど苦ではない。


「はーい、あらこの前の子達じゃんまた来たんだ」

「ユノに合わせてください」

「うーん、いいよ」


気のせいか今少し声が低くなった気がするのは。


「できれば春さんは外してもらってもいいですか」

「ん、なんで」

「真剣な話しがしたいんです」

「なるほどね~、なら私はいかにもそのために連れてこられた人とカフェにでも行った方がいいのかな」

「そうです」


おい、なんだそのいかにもな人とは。

春さんは一度家の中に入って行きそして少し化粧をして出てきた。


「よし、じゃあ行こうか」


少し面倒な事になると思っていたが事は順調に進んでくれた。

これが嵐の前の静けさでなければいいが。


「志乃ちゃんは部屋にいるから勝手に入っちゃていいよ。私は関くんとのデート楽しんでくるから」

「デートではないがな」


どうやら彼女は俺の事を覚えて居たらしい。

しかも妙に気前がいい少し人間性が出来すぎではないか。

そんな事を考えながら俺達二人は近くの喫茶店へと向かう。

向かう途中で春さんが話しかけてきた。


「ねぇ、何で君は合って少ししか立っていない彼女達の言う事を聞いてるの」

「それは俺が他人と触れ合うことが無いからだ」

「なんで、お金がればキャバクラとか何かの団体に入れるじゃん。もしお金が無くてもボランティアすれば良いし」

「金なんてホームレスにはねぇよ、あと俺はホームレスはボランティアを受ける立場だ。逆にボランティアをやるにしてもそれは俺がホームレスを抜け出したらだ、抜けれる気しないけど」

「すごいね、そんな事を堂々と言える人に初めて出会ったよ」

「それは良かったな」


春さんはそれは皮肉だよと言い数歩前へ進みこちらに振り返った。

そして作られた笑顔で言葉を放つ。


「君、変な人だね」


それに対して俺はわかりきったかのように返す。


「それは伊達に11年ホームレスやってるんでね」

「11年て、面白い冗談を言うね。お姉さんそういうの好きよ」

「お前の弟になったつもりはない」


この女ぶっ飛んだ事を平気で言いやがる。

ツッコむのが大変になるのでやめてほしいものだ。

そんなやり取りを続けながら歩いて行くと自ずと喫茶店が見えてくる。


「今日は休日だけど人は少ないみたいだね」

「そうだな、人が少なくて助かった」

「助かったて何でかな」

「普通に人が苦手なんですよ」

「そうかな。私ほどの人と話せたら苦労はしないと思うけど」


この女どれだけ自分に自身があるのだろうか。

普通の人だったら今のような言葉はそうそう出てこないだろう。


「私コーヒーブラックとパンケーキ一つください」

「俺はコーヒーで」


席に座りメニュー表を見ながら定員に注文をすると春さんはショルダーバックから本を取り出し読み出す。

俺はというと時計を見ながらこれからすることを思い返していた。

此処までは計画通りだな。ほとんど空気を呼んでくれた春さんのおかげではあるが。

そんな事をしていると定員がコーヒーを運んでくる。


「おまたせしました」

「意外と来るのが早かったね」


彼女はそう言うと次に届いたパンケーキにフォークを刺し器用にナイフで一口サイズに切り口に運ぶ。

一通り堪能した後春さんが話しかけてきた。


「ねぇ面白い話ししてよ。お、嫌な反応だね」


面白い話。そんなものは個人によって違うので一番難しいリクエストだろう。それに俺の人生で面白かった出来事など無いのでまず喋ることすらできない。


「ありませんね」

「そういう事をちゃんと言ってくれるのは好きよ。対して面白い話でもないのに黙々と話して来る人は嫌いだからね」

「それは良かった」

「しょうがないな~じゃあ私がしてあげる」


そう言って彼女は語り始める。


「私、実は名前春じゃないんだよね」

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